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『ICD-11』(国際疾病分類 第11版)の登場で何が変わる?

去る2018年6月、世界保健機関(WHO)が『ICD-11』(国際疾病分類 第11版)を公表しました。ICDとは、疾病や死因を国際的に統一した基準で分類したもので、正式名称は「疾病及び関連保健問題の国際統計分類」(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems)です。病気やけが、死因などに「コード」(アルファベットと数字の組み合わせ)を付与し、そのコードは国の公的統計(人口動態統計等)や国際統計に活用されています。また、病院における診断、診療録、医療保険の支払いなどにもICDのコードが使われます。

 

現在(2019年6月時点)用いられている『ICD-10』は1990年に発効されたもので、今回のICD-11は約30年ぶりの全面改訂です。2019年5月にWHO世界保健総会で採択され、正式発効は2022年を予定しています。

 

ICDは、身体疾患や精神障害はもちろん、妊娠、分娩および産褥、損傷、中毒なども含めて疾病や保健領域を網羅的に分類しています。ICD-11では、新たに「第4章 免疫系の疾患」「第7章 睡眠・覚醒障害」「第17章 性保健健康関連の病態」「第26章 伝統医学の病態─モジュールI」が設けられました。

 

精神疾患はこれまで「第5章 精神および行動の障害」に分類されていましたが、ICD-11からは「第6章 精神・行動・神経発達の疾患」に変更される見込みです。 同章では、新たに「ゲーム障害」「強迫性性行動障害」が独立した診断カテゴリーとして加わりました。

雑誌『精神医学』(2019 Vol.61 No3/医学書院)によると、ゲーム障害は「制御困難」「優先度の高さ」「否定的な問題にもかかわらず使用・エスカレート」を全て満たし、「重大な障害」をもたらすことが診断基準になっているようです。例えば、ゲームを長時間やめられず、就寝や食事など日常的な活動が疎かになり、ほかに趣味、興味がほとんどなくなる。それによって遅刻や不登校、人間関係の不和などさまざまな悪影響が現れていても、ゲームを続けてしまうような病像が考えられます。

 

強迫性性行動障害は、強烈な性的衝動によってさまざまな問題が生じているにもかかわらず、性行動を制御することができない障害です。ICD-10までは、性欲の異常性に着目して「過剰性欲」と呼ばれ、性機能不全のカテゴリーに含まれていました。それが、今回のICD-11では衝動を制御できない点を重視し、「衝動制御の障害」のカテゴリーに移動されました。診断基準には、「強烈かつ反復的な性的衝動または渇望の制御の失敗」「性行動の反復を減らす努力がたびたび失敗に終わっている」などが含まれているようです。

まだ研究が十分ではない領域ですが、こうした分類の変更によって、社会的な偏見が是正され、治療を必要とする人が受診しやすくなることが期待されます。

 

ICD-11でもう一つ、大きな変更となったのが「性同一性障害」の分類です。ICD-10までは精神障害として分類されていましたが、ICD-11では「性別不合」(日本語仮訳)という名称に変わり、「第6章 精神・行動・神経発達の疾患」ではなく「第17章 性保健健康関連の病態」に分類されることになりました。体の性と心の性の不一致は、精神的な障害や疾患ではない、とする大きな変更です。

ほかの疾患においても、ICD-11で診断基準や分類の仕方が変更になったものがあります。統合失調症は、「非器質性」という用語が用いられていましたが、脳の障害ではないという印象を避けるため「一次性」という用語に変更されました。さらに、亜型(妄想型、破瓜型など)も廃止されました。

また、ICD-10で「気分(感情)障害」と分類されていたものは、ICD-11では「気分障害群」となりました。気分障害群は「双極性障害群」と「抑うつ障害群」に下位分類され、双極性障害群は「双極T型障害」と「双極U型障害」、「気分循環性障害」に分けられました。双極性障害の分類は、2013年に発効された「DSM-5」(アメリカ精神医学会の診断・統計マニュアル)に倣ったものと思われます。

 

その他、「ストレス関連障害」「強迫性障害」は新たに障害群としてまとめられ、「パーソナリティ障害」は分類の仕方が大きく変わりました。

今後、ICD-11の日本語版が普及すると、国内における精神科医療の診断は少なからず変化することが予想されます。

 

※参考文献

『精神医学』(2019 Vol.61 No3/医学書院)

『ICDのABC』(厚生労働省)

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