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タバコ使用障害

タバコ使用障害

Tobacco Use Disorder

 

疾患の具体例

40歳、男性。呼吸器疾患を患っています。10代の頃から喫煙を続けており、主治医から禁煙するよう指導されました。しかし、家に帰れば家族が喫煙しているため、数時間しかタバコを吸わずにいられません。医師は、ニコチン貼付剤を処方し、必要に応じてニコチンガムを使用するよう助言しました。禁煙開始から2日後、看護師が電話をすると彼は禁煙を継続していました。しかし1週間後に電話をすると、再び喫煙をしていました。呼吸器疾患の症状が辛くても、目の前でタバコを吸っている人を見ると欲求を抑えられないと言います。

 

特 徴

タバコ使用障害の基本的特徴は、タバコによって肉体的、精神的な問題が起こっているにもかかわらず、タバコをやめたり減量したりできないことです。タバコを毎日吸っていると、数時間、吸わないでいるだけでタバコを渇望するようになります。本当は仕事や社交などで出掛けなくてはならなくても、行き先が禁煙の場所だと欠席したり、しばしば中座したりして喫煙しようとします。そのせいで、人間関係が悪化することもあります。また、寝たばこや、燃えやすいものの近くでの喫煙など、危険な行為をする人もいます。起床後すぐに喫煙したり、喫煙のために夜中に起きたりすることもあるかもしれません。

この障害のある人は、肺がんやその他のがん、心疾患、呼吸器疾患、周産期の問題(低出生体重児、流産など)、咳、息切れ、早まる皮膚の老化など、医学的状況がしばしば起こります。

 

有病率

タバコ使用障害の有病率は明らかになっていませんが、DSM-4の「ニコチン依存」の基準が目安となります。アメリカにおけるニコチン依存の12カ月有病率は18歳以上で13%です。成人男性は14%、成人女性は13%でほぼ性差は見られません。65歳以上は4%で、年齢が上がるとともに有病率が低下します。

 

経 過

一般に、タバコ使用障害のいくつかの症状は、喫煙を開始してからすぐに起こります。この障害のある人の80%以上がタバコをやめようと試みますが、60%が1週間以内に再開し、一生禁煙に成功する割合は5%以下です。しかし、ほとんどの喫煙者はさまざまな方法で禁煙を試み、最終的に半分が禁煙に成功します。

 

原 因

気質要因:

外交的な性格な人は、タバコを使用しやすい傾向があります。注意欠如・多動症または素行症の子どもと、抑うつ障害、双極性障害、不安症、パーソナリティ障害、精神病性障害、他の物質使用障害の成人は、タバコの使用とその継続、さらにタバコ使用障害の危険性がより高くなります。

 

環境要因:

低収入や低学歴の人はタバコを使用しやすく、やめにくい傾向があります。

 

遺伝要因と生理学的要因:

タバコの使用開始、タバコの使用継続、タバコ使用障害の発症には、他の物質使用障害と同程度(約50%)の遺伝可能性があります。

 

治 療

タバコ使用障害の治療として行動療法が行われています。どんな時に喫煙したくなるかを確認し、そうした状況に対処するための行動技法、あるいは認知技法を計画・実行します。他に、「ニコチン置換療法」といって、ニコチンガムやニコチン口内錠、ニコチン貼付剤を使用し、離脱症状を軽減させながら禁煙に導く方法もあります。

ほとんどの患者さんと医師は急激な禁煙を目指しますが、急激であることが段階的禁煙より優れているデータはありません。段階的に禁煙したい患者の意見は尊重されるべきです。

なお、禁煙を続けている患者さんの喫煙再開は、しばしば唐突に起こります。医療者は、経過観察のために定期的に連絡を入れることが望ましいと言えます。そうした方法の禁煙成功率は、患者さんが自力で禁煙する場合の2倍にのぼることがわかっています。

 

診断基準:DSM-5

A. タバコの問題となる使用様式で、臨床的に意味のある苦痛が生じ、以下のうち少なくとも2つが、12カ月以内に起こることにより示される。

  1. タバコを意図していたよりもしばしば大量に、または長期間にわたって使用する。
  2. タバコを減量または制限することに対する、持続的な欲求または努力の不成功がある。
  3. タバコを得るために必要な活動、またはその使用に多くの時間が費やされる。
  4. 渇望、つまりタバコ使用への強い欲求、または衝動
  5. タバコの反復的な使用の結果、職場、学校、または家庭における重要な役割の責任を果たすことができなくなる(例:仕事への障害)
  6. タバコの作用により、持続的、または反復的に社会的、対人的問題が起こり、悪化しているにもかかわらず、その使用を続ける。
  7. タバコの使用のために、重要な社会的、職業的、または娯楽的活動を放棄、または縮小している。
  8. 身体的に危険な状況においてもタバコの使用を反復する(例:臥床中の喫煙)。
  9. 身体的または精神的問題が、持続的または反復的に起こり、悪化していることを知っているにもかかわらず、タバコの使用を続ける。
  10. .耐性、以下のいずれかによって定義されるもの:
    (a)期待する効果に達するために、著しく増大した量のタバコが必要
    (b)同じ量のタバコの持続使用で著しく効果が減弱
  11. .離脱、以下のいずれかによって明らかとなるもの:
    (a)特徴的なタバコ離脱症候群がある
    (b)離脱症状を軽減したり回避したりするために、タバコ(またはニコチンのような密接に関連した物質)を摂取する。

 

該当すれば特定せよ

寛解早期:タバコ使用障害の基準を過去に完全に満たした後に、少なくとも3カ月以上12カ月未満の間、タバコ使用障害の基準のいずれも満たしたことがない(例外として、基準A4の「渇望、つまりタバコ使用への強い欲求、または衝動」は満たしてもよい)。

 

寛解持続:タバコ使用障害の基準を過去に完全に満たした後に、12カ月以上の間、タバコ使用障害の基準のいずれも満たしたことがない(例外として、基準A4の「渇望、つまりタバコ使用への強い欲求、または衝動」は満たしてもよい)。

 

該当すれば特定せよ

維持療法中:その人が、ニコチン置換療法などの長期維持薬物療法を受けていて、その型の医薬品に対するタバコ使用障害(ニコチン置換療法に対する耐性または離脱は除く)の基準を満たしたことがない場合に用いられる。

 

管理された環境下にある:この追加の特定用語は、その人がタバコの入手を制限された環境下にある場合に用いられる。

 

※参考文献

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)

『カプラン 臨床精神医学テキスト 日本語版第3版』(メディカルサイエンスインターナショナル)

『DSM-5 ケースファイル』(医学書院)

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