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アルコール離脱

アルコール離脱

Alcohol withdrawal

 

疾患の具体例

32歳、男性。大学時代から飲酒を始め、ほぼ毎日、晩酌をしていました。連休で友人の集まりが続いた時は、5日間ほど続けて朝まで大量飲酒をしました。休暇が明け、朝にコーヒーを飲もうとしましたが、手が震えてコーヒーカップを持つことができません。気分が興奮状態になり、吐き気を催したことから、医療機関を受診しました。

 

特 徴

アルコール離脱の基本的特徴は、長期にわたって大量のアルコールを使用している人が突然、アルコールの使用をやめたり、使用量を減らしたりした時に現れる不快な症状です。

症状は人によってさまざまですが、手の震えは典型的です。ほかに、自律神経系過活動(発汗や脈拍の増加など)、振戦(震え、神経過敏など)、不眠、吐き気や嘔吐などが挙げられます。精神的に興奮したり、不安になったり、知覚症状(妄想、幻覚など)が現れたりする人もいます。また、てんかんに見られるようなけいれん(全般性強直間代発作)が生じることもあります。

アルコール離脱せん妄と呼ばれる振戦せん妄は、身体の震えや幻覚妄想、過剰興奮、意識障害などが生じ、結果として重度の病状や、死に至る可能性がある緊急事態です。

なお、アルコール離脱の症状は、再びアルコールを使用するか、ベンゾジアゼピン系の薬剤を使用すると緩和されます。そのため、せっかく禁酒をしようと思っていたのに、こうした離脱症状がつらくて飲酒を再開してしまう人もいます。

 

有病率

アルコール使用障害のある人のうち、一般的な経済状況の人では約50%がアルコール離脱症状を経験していると推定されています。ホームレス状態や入院中でアルコール障害のある人は、80%以上でアルコール離脱を経験していると推定されます。離脱症状が生じた人のうち、アルコール離脱せん妄や離脱けいれんを示す人は10%以下です。

なお、30歳未満の人の離脱は比較的まれで、年齢とともに危険性と重症度が増加します。

 

経 過

急性期のアルコール離脱は、通常、大量飲酒の後だけに発症します。断酒後、2日目に最も強く出現し、4〜5日間続きます。症状の現れ方は、時間の経過に伴って変化します。典型的には、断酒後6〜8時間で振戦が現れ、8〜12時間で知覚症状など、12〜24時間で発作、72時間以内に振戦せん妄が出現します。

なお、急性症状が治まった後も、3〜6カ月にわたって不安、不眠、自律神経機能異常などが続く人もいます。

 

原 因

環境要因:

アルコール離脱の発症リスクは、アルコールの消費量と頻度とともに増加します。アルコール離脱のある人の多くは、連日あるいは複数の日で大量の飲酒を行っています。しかし、個人差が大きく、何らかの医学的疾患のある人、アルコール離脱の家族歴のある人、過去に離脱を経験している人、鎮静薬や睡眠薬、抗不安薬を使用している人はリスクが高まります。

 

治 療

医学的に解毒管理が必要な場合は、入院して治療を受けます。薬物治療における第一選択薬はベンゾジアゼピンです。これは、アルコール離脱に伴う発作、せん妄、不安、頻脈、高血圧、発汗、振戦を抑制する効果があることが認められています。ほか、断酒会への参加などが行われています。

アルコール離脱せん妄については、予防が最善の治療です。危険な状態から脱するまで2〜4時間おきにベンゾジアゼピンを投与することが推奨されています。それでもせん妄が生じた場合は、ベンゾジアゼピンを増量して投与します。また、アルコール離脱せん妄の治療には、支持的な精神療法が重要かつ不可欠です。患者さんは自分の症状におびえ、当惑し、不安に感じていることが多いため、熟練した支援者によるサポートが必要です。

 

診断基準:DSM-5

A.大量かつ長期間にわたっていたアルコール使用の中止(または減量)

B.以下のうち2つ(またはそれ以上)が、基準Aで記載されたアルコール使用の中止(または減量)の後、数時間〜数日以内に発現する。

  1. 自律神経系過活動(例:発汗または100/分以上の脈拍数)
  2. 手指振戦の増加
  3. 不眠
  4. 嘔気または嘔吐
  5. 一過性の視覚性、触覚性、または聴覚性の幻覚または錯覚
  6. 精神運動興奮
  7. 不安
  8. 全般性強直間代発作

C.基準Bの徴候または症状は、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

D.その徴候または症状は、他の医学的疾患によるものではなく、他の物質による中毒または離脱を含む他の精神疾患ではうまく説明されない。

 

該当すれば特定せよ

知覚障害を伴う:この特定用語は、現実検討が保たれていた状態での幻覚(通常、視覚性または触覚性)、または聴覚、視覚または触覚性の錯覚がせん妄の存在なしに生じるという、まれな場合に適用される。

 

※参考文献

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)

『カプラン 臨床精神医学テキスト 日本語版第3版』(メディカルサイエンスインターナショナル)

『DSM-5 ケースファイル』(医学書院)

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