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愛着障害

乳幼児は恐怖や疲れや親と距離が離れたときなどに、親に近づくことにより安全感を得ようとします。

イギリスの精神科医ボウルビーはその際、乳幼児に愛着のシステムが働いていると考えました。養育者の側はこのような乳幼児の愛着行動に対して、感受性をもってなだめる機能を発揮することが適応的であるとされています。乳幼児はこのような感受性のある養育者との安全な愛着関係を繰り返し体験することにより、他者に対する安全感・安心感を獲得していくと考えられています。そのため主要な養育者との愛着の形成(愛着システムの健全な発達)は、乳幼児期の最も重要な心理・社会的発達課題の一つとされており、実際多くの実証的研究により愛着の形成が以降の発達に大きな影響を与えることが示されています。愛着形成が何らかの理由により重度に障害された乳幼児に、愛着障害(Attachment Disorder)が発症すると考えられています。

DSM-IVには、反応性愛着障害(Reactive attachment disorder)が挙げられています。ジーナーらのグループは、DSM-IVの反応性愛着障害を選択的な愛着対象がない(No discriminate attachment figure)最重度の愛着の問題をもった乳幼児と考え、選択的な愛着対象はあるもののその愛着の質が極度に障害されている愛着障害を安全基地の歪み(Secure base distortions)として、区別しました。

ここでは、DSM-IVの反応性愛着障害について説明していきます。

 

特 徴

DSM-IVでは、抑制型と脱抑制型の二つに分類しています。

抑制型の特徴は、対人的相互作用のほとんどで、適切な形で開始したり反応したりできず、過度に抑制され警戒したり、極度に両価的で矛盾した反応を示します。

脱抑制型は、拡散した愛着で、選択的な対象に対して愛着を示す能力が著しく欠如しています。たとえば、よく知らない人に対しての過度になれなれしく、無分別な社交性を示すという形で現れます。

 

原 因

DSM-IVの定義からも、安楽、刺激および愛着に対する子どもの基本的な情緒的欲求、基本的な身体的欲求が持続的に無視されたり、一次的な世話人が繰り返し変わることによって安定した愛着形成が阻害されることが病因とされています。たとえば、養父母が頻繁に変わる、戦争などにより孤児になること、虐待・ネグレクト、などが具体的な原因として考えられています。

 

経過と予後

養育放棄および有害な養育の持続期間と重症度、および成長不全などの関連する合併症に左右され、予後の幅は、死から健常発達まで広がっています。一般に、介入が早期であればあるほど、それだけこの障害は回復しやすいです。

また、選択的愛着が発達的に現れる9~10ヵ月以降で、5歳未満に発症します。予後についての研究も非常に限られていますが、この障害が愛着について最重度の問題であるため、乳幼児以降の心理・社会的発達の大きな危険因子であると考えられています。また無差別な社会性はのちに愛着対象が形成されたあともみられるとの報告があります。

 

治 療

養育者との分離を含めた適切な養育環境の提供が必要となります。栄養不良やその他の医学的問題のために入院が必要となることもあります。ハイリスクの家族にこの障害が発生しやすいために、包括的なアプローチも求められます。包括的介入には乳幼児−親治療、親個人への薬物療法や心理療法的アプローチ、家族療法的アプローチ、地域資源や社会福祉サービスの提供(家政婦や経済的支援の提供を含む)などが含まれます。これらの介入を通して、養育者が乳幼児の愛着行動に対して適切な感受性をもった養育を行えるように支援する必要があります。

 

自閉性障害との区別

自閉性障害では、一般に栄養不足はみられず、体格や体重は年齢相応であり、機敏で活発です。愛着障害とは異なり、家庭から離すことで急速に症状が改善するということはありません。

 

精神遅滞との区別

精神遅滞では、精神年齢に相応の適切な対人関係能力と、健常発達児にみられるのと同様の発達段階を示します。

 

診断基準

DSM-W-TR ICD-10
コード番号313.89
幼児期または小児期早期の反応性愛着障害
(reactive attachment disorder of infancy)
コード番号F94.1
小児期の反応性愛着障害(Reactive attachment disorder of childhood)
  1. 5歳以前に始まり、ほとんどの状況において著しく障害され十分に発達していない対人関係で、以下の(1)または(2)によって示される。
  1. 対人的相互反応のほとんどで、発達的に適切な形で開始したり反応したりできないことが持続しており、それは過度に抑制された、非常に警戒した、または非常に両価的で矛盾した反応という形で明らかになる(例:子供は世話人に対して接近、回避、および気楽にさせることへの抵抗の混合で反応する、または固く緊張した警戒を示すかもしれない)。
  2. 拡散した愛着で、それは適切に選択的な愛着を示す能力の著しい欠如を伴う無分別な社交性という形で明らかになる(例:あまりよく知らない人に対しての過度のなれなれしさ、または愛着の対象人物選びにおける選択力の欠如)。
  1. 基準Aの障害は発達の遅れ(精神遅滞のような)のみではうまく説明されず、広汎性発達障害の診断基準も満たさない。
  2. 以下の少なくとも1つによって示される病的な養育
  1. 安楽、刺激、および愛着に対する子供の基本的な情緒的欲求の持続的無視。
  2. 子供の基本的な身体的欲求の無視。
  3. 主要な世話人が繰り返し変わることによる、安定した愛着形成の阻害(例:養父母が頻繁に変わること)。
  1. 基準Cにあげた養育が基準Aにあげた行動障害の原因であるとみなされる
    (例:基準Aにあげた障害が基準Cにあげた病的な養育に続いて始まった)。

◆病歴を特定せよ

抑制型: 基準A1が臨床像で優勢な場合

脱抑制型:基準A2が臨床像で優勢な場合

<除>アスペルガー症候群(F84.5)

小児期の脱抑制性愛着障害(F94.2)

身体的問題をもたらす被虐待児症候群(T74)

選択的な愛着のパターンの正常な変異

小児期の性的身体的虐待、心理社会的問題を生じるもの(Z61.4-Z61.6)

[特徴]

乳児や幼児に起こるこの障害は、社会的関係パターンが持続的に異常を示すことが特徴であり、情緒障害を伴い、周囲の環境の変化に反応したものである。はげましても効果がない恐れと過度の警戒が特徴的であり、友だちとの社会的相互交流が乏しいことが典型的である。自分自身や他人への攻撃性がしばしばみられ、みじめさを感じていることがふつうであり、ある場合には成長の不全が起こる。

[原因]

この症候群はおそらく親のひどい無視、虐待や深刻な養育過誤の直接的な結果として起こりうる。

[分類]

この行動パターンが存在することは広く認められ受け入れられているが、しかし適用すべき診断基準、症候群の範囲、1つの妥当な疾患単位を構成するのかどうかに関しては不明確なままである。しかしながら、このカテゴリーをここに含めたのは、この症候群が公衆衛生上重要であること、存在することは何ら疑いがないこと、この行動パターンが明らかに他の診断カテゴリーの診断基準に当てはまらないことからである。

[診断ガイドライン〜特徴]

中核的な特徴は、5歳以前に形成された養育者との異常な関係パターンであり、正常な子どもにはふつうではみられない不適応の特徴をもち、持続的であるが、育て方が十分にはっきりと変化すればそれに反応する。

この症候群の幼児は、別離や再会のときに最も明瞭となる、ひどく矛盾したあるいは両価的な社会的な反応を現す。たとえば、幼児は視線をそらしながら近づいたり、抱かれている間とんでもない方向をじっと見ていたり、養育者がなだめても、近づいたり避けたり逆らったりして複雑な反応を示す。情緒障害は明らかなみじめさ、情緒的反応の欠如、床にうずくまるなどの引きこもり反応、および/または自分自身や他人の悩みに対する攻撃的な反応で示される。はげましても効果がない恐れと過度の警戒(しばしば「凍りついた用心深さ」といわれる)が生じる場合もある。大部分の例で仲間たちとの相互交流に興味をもつが、しかし陰性の情緒反応により一緒に遊ぶことは妨げられている。愛着障害には、身体的発達不全を合併し、身体の成長の障害される例もある〔随伴する身体的コード:R62〕。

[診断ガイドライン〜正常な子どもとの区別]

多くの正常な子どもは、どちらか一方の親に選択的な愛着をもつというパターンが安定していないが、反応性愛着障害と混同してはならない。これはいくつかの重要な点で異なっている。愛着障害は、異常な不安定さが特徴的であり、正常な子どもではほとんどみられない、著しく矛盾する社会的反応として現れる。異常な反応はさまざまな社会的状況にわたって広がり、特定の養育者との一対の関係に限られていない。はげましへの反応が欠如していること、無感情、みじめさや、恐怖という形の情緒障害を伴う。

[診断ガイドライン〜
広汎性発達障害との区別]

下記の5つの主な特徴によって広汎性発達障害から鑑別される。

  1. 反応性愛着障害の小児は社会的な相互関係と反応性の正常な能力をもっているが、広汎性発達障害の小児はもっていない。
  2. 反応性愛着障害では、最初はさまざまな状況で社会的反応の異常なパターンが行動の全般的特徴であるが、もし継続的に責任をもった養育が行われる正常な環境に育てられれば、大幅に改善する。広汎性発達障害ではこうした改善は起こらない。
  3. 反応性愛着障害の小児は言語発達が障害されることがあるが(F80.1で記述された型)、自閉症に特徴的なコミュニケーションの質的な異常は示さない。
  4. 自閉症と異なり、反応性愛着障害は、環境の変化に反応を示さない持続的で重篤な認知上の欠陥を伴わない。
  5. 行動、関心、活動にみられる、持続的な、限局した、反復性で、常同的なパターンは反応性愛着障害の特徴ではない。

【診断ガイドライン〜原因】

反応性愛着障害はほとんど常に、ひどく不適切な子どもの養育に関係して生じる。これは心理的虐待あるいは無視の形をとる(過酷な懲罰、子どもの申し出にいつも反応しないこと、あるいは非常にばかげた養育で示される)、あるいは身体的な虐待あるいはネグレクトである(子どもの基本的な身体的欲求をいつも無視すること、繰り返して故意に傷つけること、あるいは栄養補給の不適切さで示される)。不適切な養育とこの障害との間の密接な関連について知見が十分でないので、環境上の不全とゆがみは診断に必要なものではない。しかしながら、虐待やネグレクトの証拠なしにこの診断をくだす場合には注意を要する。逆に虐待やネグレクトがあったからといって、機械的にこの診断をくだしてもいけない。虐待されたりネグレクトされたりする子どもがすべてこの障害を示すとは限らない。

コード番号F94.2
小児期の脱抑制性愛着障害(Disinhibited attachment disorder of childhood)

<含>惰性欠如精神病質
施設症候群

<除>アスペルガー症候群(F84.5)
小児のホスピタリズム(F43.2)

多動性あるいは注意欠陥障害(F90.-)

小児期の反応性愛着障害(F94.1)

[特徴]

異常な社会的機能の特殊なパターンであり、5歳以前に発症し、いったん形成されると周囲の環境が著しく変化しても持続する傾向を示す。この障害の小児は2歳ごろまではしがみつきと誰にでもべったりとくっつく、無選択的に集中する愛着行動を示す。4歳まで相手かまわずの愛着行動は残るが、しがみつき行動は、注意を引こうとする、無分別に親しげな行動にとってかわられる。小児期の中・後期には、選択的な愛着が発達することもしないこともあるが、しかし注意を引こうとする行動はしばしば持続し、仲間との調子を合わせた相互交流が乏しいのがふつうである。また環境によっては情緒障害や行動障害を伴うことがある。この症候群は、施設以外でも起こるが、乳児期から施設で育てられた子どもで最もはっきりと確認されてきている。一部は、養育をする人があまりにしばしば替わる結果として、選択的な愛着を発達させる機会が常に失われていることに起因すると考えられる。この症候群の概念の統一性は、相手かまわずの愛着が早期にみられること、社会的交流の乏しさが持続すること、状況特異性が欠如することに基づいている。

【診断ガイドライン】

診断は、5歳以前に選択的な愛着が異常なほどに広範囲であること、および幼児期に誰にでもしがみつく行動、および/または小児期の初、中期にみさかいなく親しく、注意を引こうとする行動を伴うという明らかな事実に基づかなければならない。通常仲間たちとの親しい信頼関係を形成するのは困難である。情緒障害や行動障害は伴ったり、伴わなかったりする(一部はその小児の現在の環境による)。大部分の例で、生後1年のうちに養育者が頻繁に替わったり、家族の位置づけがたびたび変わったりするという(養育家庭が何回も替わるような)養育歴が明白である。

【参考・引用文献】

・DSM-W-TR精神疾患の分類と診断の手引 新訂版 高橋三郎他訳 2010 医学書院

・カプラン精神医学ハンドブック 融道男他訳 2010 メディカルサイエンスインターナショナル

・ICD-10精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン 融道男他監訳 2009 医学書院

・知っておきたい精神医学の基礎知識 サイコロジストとコ・メディカルのために
上島国敏・上別府圭子・平島奈津子編 2010 誠信書房

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