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多動性障害

F90 多動性障害
Hyperkinetic Disorders

注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害
ADHD:Attention Deficit Hyperactivity Disorder

 

疾患の具体例

6歳、男児。幼稚園に通っていた頃から、誰よりも落ち着きがなく、食事中に立ち上がったり、散歩中に道路へ飛び出したりすることがよくありました。小学生になってからは、授業中にソワソワし、他の子どもに話しかけたり、急に教室を出て行ったりします。当初、教師は「しつけが悪い」「クラスメイトに迷惑だ」と思っていましたが、あまりにも落ち着きがないので「発達に障害があるのでは」と親に伝えました。クラスではいじめられて孤立し、授業を聞けないため成績も伸びません。

 

特徴

この障害は、昔からさまざまな名称で呼ばれてきました。WHOの診断ガイドライン「ICD-10」では「多動性障害」として解説しています。著しい不注意と、調節しにくい多動が持続すること。通常5歳までに発症し、どんな場所でも症状が出ることが特徴とされています。

アメリカ精神医学会の診断と統計マニュアル「DSM-5」では、「注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害」(ADHD)として解説されています。以前は「注意欠陥」と日本語訳されていましたが、2014年より「注意欠如」に改名されました。

ADHDの基本的特徴は、発達を妨げるほどの不注意と多動性、衝動性です。

  • 不注意……課題から気がそれることが多く、我慢したり集中し続けたりすることが困難です。反抗や理解力の欠如ではありません。
  • 多動性……不適切な場面で過剰に動き回ります。やたらとソワソワしたり、なにかをトントン叩いたり、他人が疲れるほどしゃべりすぎたりすることがあります。
  • 衝動性……事前に見通しを立てることなく即座に行動することです。突然、道路に飛び出すなど危険な行動をすることもあります。すぐに就職先を決めるなど、長期的な結果を考慮せずに重要な決定をする傾向があります。

ADHDは小児期に発症し、いくつもの症状が12歳になる前に出現します。症状は、複数の場(家庭と学校、職場)で現れます。持続的な努力が苦手なため、周囲からは「怠け者」「無責任」「非協力的」などと思われ、いじめられたり、無視されたりしがちです。同年代の友人ができにくいかもしれません。IQが低い傾向があり、学校の成績は伸び悩みます。多動性や衝動性によってよく怪我をします。

成人では職場での機能、成績、出勤状況が不良になりがちです。対人関係が築けず、失業する人も多くいます。

この障害がある子どもは、青年期に素行症を。成人期に反社会性パーソナリティ障害を発症する可能性が高く、その結果、物質使用障害や受刑の可能性が上昇します。

 

有病率

ほとんどの文化圏で子どもの約5%、成人の約2.5%にADHDが生じると言われています。男性のほうが女性より多く、小児期で2:1、成人では1.6:1です。女性は男性よりも、主に不注意の特徴を示す傾向があります。

 

経過

ほとんどの場合、ADHDは小学生のうちに診断がつき、不注意の特徴がより著しくなります。青年期早期に比較的安定しますが、かなりの割合で成人後も多少の障害が残ります。そのため、落ち着きのなさや不注意、計画性のなさ、衝動性に伴う困難は大人になっても続きます。

 

原因

気質要因:行動抑制(初めての人や物を警戒する)があまりなく、目新しい物に飛びつく気質などがADHDに関連しています。

環境要因:極低出生体重児(1500g未満)ではADHDの危険性が2〜3倍となりますが、低出生体重児の大多数はこの障害を発症しません。ADHDは妊娠中の喫煙と関連していますが、全員がそうではなありません。また、児童虐待、ネグレクト、複数の里親による療育、神経毒(例:鉛)への曝露、感染症(例:脳炎)、または子宮内アルコール曝露の既往に関連しているかもしれません。

遺伝要因と生理学的要因:遺伝率はかなり高く、第一度親族にADHDのいる人は、この障害になるケースが多いとされています。視覚や聴覚障害、代謝異常、睡眠障害、栄養失調などが、ADHDに影響しうるとする研究もなされています。

 

治療

薬物治療が行われます。効果が高く安全性も優れている薬は中枢神経刺激薬です。

 

診断基準:ICD-10

注意の障害と多動が基本的特徴である。両者が診断に必要であり、1つもしくはそれ以上の状況で両者を明らかにしなければならない(たとえば家庭、教室、病院など)。

注意の障害は、課題を未完成で中止したり、活動が終わらないうちに離れてしまったりすることで明らかになる。こういった子どもたちはしばしば1つの活動から次の活動へ移るが、おそらく他のことに気が散り、1つの課題に注意を集中できないためと思われる(しかし臨床検査では通常、異常な程度の知覚や認知の転導性を示さない)。持続性と注意の欠陥は、その子どもの年齢とIQから考えて過度な場合にのみ診断されるべきである。

多動は、とくにおとなしくしていなくてはならない状況において、過度に落ち着きがないことを意味する。状況によって、走り回り跳ね回る、あるいは座ったままでいるべきときに席から立ち上がる、あるいは過度にしゃべり騒ぐ、あるいはもじもじそわそわしていることが含まれる。判定の基準は、状況から予想される程度より活動が過度でかつ、同じ年齢とIQの他の小児と比較して活動が過度であることが必要である。この行動特徴が最も顕著となるのは、行動の自己統制が高度に必要とされる、構造化され組織化された状況である。

以下の随伴する特徴は診断に必ずしも十分でも必要でもないが、診断の確認に役立つ。社会的関係での抑制欠如、多少危険な状況でも向こうみずであること、社会的規則に対する衝動的な軽視(他人の活動に干渉したり妨げたり、他人が質問を終わらないうちに答えたり、順番を待つのが困難であったりすること)などである。

学習の障害と運動の不器用さはきわめてしばしばみられ、これらが存在するときは個別に(F80-F89)に記載されるべきであり、これらはこの多動性障害を実際診断する際の基準の一部にしてはならない。 行為障害の症状は主診断の基準でも包含基準でもない。しかしその症状が存在するかしないかは、この障害の主な下位分類の基準となる(以下を参照せよ)。

特徴的な問題行動は早期に発現(6歳以前)し、長く持続するものである。しかしながら、入学前には正常範囲の幅が大きいので、多動と認定するのは困難である。学齢以前の幼児では程度が極度の場合のみ診断がなされる。

多動性障害と診断することは成人期でも可能である。基本的には小児期と同様であるが、注意と行動に関しては発達に見合った基準を考慮して診断しなければならない。多動が小児期に存在し、しかし現在はなく非社会的パーソナリティ障害や物質乱用などの他の状態になっている場合には、以前の状態ではなく現在の状態でコード化する。

鑑別診断

障害が混合していることがふつうであり、そして広汎性発達障害がある場合には、それが優先する。診断で主に問題となるのは行為障害との鑑別である。多動性障害はその診断基準が満たされれば、行為障害に優先して診断される。しかしながら、軽度の過動と不注意は行為障害でも一般にみられる。多動と行為障害の特徴がいずれも存在し、しかも他動が広汎で重篤な場合には、「多動性行為障害」(F90.1)と診断されるべきである。

さらに問題は、多動性障害に特徴的なものとはいくぶん異なる種類の過動と不注意が、不安あるいはうつ病性障害の症状として起こることがあるという事実である。したがって激越うつ病性障害の典型的な症状である落ち着きのなさから、多動性障害の診断を導き出してはならない。同様に、しばしば重篤な不安の症状としての落ち着きのなさから多動性障害の診断を導き出してはならない。もし不安定性障害の1つの基準(F40-,F41-,F43-あるいはF93-)が満たされるならば、不安と結びついた落ち着きのなさとは別に多動性障害の随伴が明らかでない限り、それが多動性障害に優先する。同様に、気分障害(F30-F39)の診断基準が満たされるならば、単に注意集中が障害され、精神運動性激越があるという理由で多動性障害を付加して診断してはならない。二重診断は、気分障害の単なる部分症状ではないことが明確に示される多動性障害が存在する場合にのみなされるべきである。

小児の多動行動が学齢期に急激に発症する場合には、あるタイプの反応性障害(心因性かあるいは器質性)、躁状態、統合失調症あるいは神経学的疾患(たとえば、リウマチ熱)によるものが多い。

(除)

不安障害(F41.-あるいはF93.0)

気分(感情)障害(F30-F39)

広汎性発達障害(f84.-)

統合失調症(F20.-)

 

診断基準:DSM-5

A. (1)および/または(2)によって特徴づけられる、不注意および/または多動性−衝動性の持続的な様式で、機能または発達の妨げとなっているもの

(1)不注意:以下の症状のうち6つ(またはそれ以上)が少なくとも6カ月持続したことがあり、その程度は発達の水準に不相応で、社会的および学業的/職業的活動に直接、悪影響を及ぼすほどである。

注:それらの症状は、単なる反抗的行動、挑戦、敵意の表れではなく、課題や指示を理解できないことでもない。青年期後期および成人(17歳以上)では、少なくとも5つ以上の症状が必要である。

  1. 学業、仕事、または他の活動中に、しばしば綿密に注意することができない、または不注意な間違いをする(例:細部を見過ごしたり、見逃してしまう、作業が不正確である)。
  2. 課題または遊びの活動中に、しばしば注意を持続することが困難である(例:講義、会話、または長時間の読書に集中し続けることが難しい)。
  3. 直接話しかけられたときに、しばしば聞いていないように見える(例:明らかな注意を逸らすものがない状況でさえ、心がどこか他所にあるように見える)。
  4. しばしば指示に従えず、学業、用事、職場での義務をやり遂げることができない(例:課題を始めるがすぐに集中できなくなる、また容易に脱線する)。
  5. 課題や活動を順序立てることがしばしば困難である(例:一連の課題を遂行することが難しい、資料や持ち物を整理しておくことが難しい、作業が乱雑でまとまりがない、時間の管理が苦手、締め切りを守れない)。
  6. 精神的努力の持続を要する課題(例:学業や宿題、青年期後期および成人では報告書の作成、書類に漏れなく記入すること、長い文書を見直すこと)に従事することをしばしば避ける、嫌う、またはいやいや行う。
  7. 課題や活動に必要なもの(例:学校教材、鉛筆、本、道具、財布、鍵、書類、眼鏡、携帯電話)をしばしばなくしてしまう。
  8. しばしば外的な刺激(青年期後期および成人では無関係な考えも含まれる)によってすぐ気が散ってしまう。
  9. しばしば日々の活動(例:用事を足すこと、お使いをすること、青年期後期および成人では、電話を折り返しかけること、お金の支払い、会合の約束を守ること)で忘れっぽい。

(2)多動性および衝動性:以下の症状のうち6つ(またはそれ以上)が少なくとも6カ月持続したことがあり、その程度は発達の水準に不相応で、社会的および学業的/職業的活動に直接、悪影響を及ぼすほどである。

注:それらの症状は、単なる反抗的行動、挑戦、敵意などの表れではなく、課題や指示を理解できないことでもない。青年期後期および成人(17歳以上)では、少なくとも5つ以上の症状が必要である。

  1. しばしば手足をそわそわと動かしたりトントン叩いたりする。またはいすの上でもじもじする。
  2. 席についていることが求められる場面でしばしば席を離れる(例:教室、職場、その他の作業場所で、またはそこにとどまることを要求される他の場面で、自分の場所を離れる)。
  3. 不適切な状況でしばしば走り回ったり高い所へ登ったりする(注:青年または成人では、落ち着かない感じのみに限られるかもしれない)。
  4. 静かに遊んだり余暇活動につくことがしばしばできない。
  5. しばしば“じっとしていない”、またはまるで“エンジンで動かされるように”行動する(例:レストランや会議に長時間とどまることができないかまたは不快に感じる;他の人達には、落ち着かないとか、一緒にいることが困難と感じられるかもしれない)。
  6. しばしばしゃべりすぎる。
  7. しばしば質問が終わる前にだし抜いて答え始めてしまう(例:他の人達の言葉の続きを言ってしまう;会話で自分の番を待つことができない)。
  8. しばしば自分の順番を待つことが困難である(例:列に並んでいるとき)。
  9. しばしば他人を妨害し、邪魔する(例:会話、ゲーム、または活動に干渉する;相手に聞かずにまたは許可を得ずに他人の物を使い始めるかもしれない;青年または成人では、他人のしていることに口出ししたり、横取りすることがあるかもしれない)。

B. 不注意または多動性―衝動性の症状のうちいくつかが12歳になる前から存在していた。

C. 不注意または多動性―衝動性の症状のうちいくつかが2つ以上の状況(例:家庭、学校、職場;友人や親戚といるとき;その他の活動中)において存在する。

D. これらの症状が、社会的、学業的または職業的機能を損なわせているまたはその質を低下させているという明確な証拠がある。

E. その症状は、統合失調症、または他の精神病性障害の経過中に起こるものではなく、他の精神疾患(例:気分障害、不安症、解離症、パーソナリティ障害、物質中毒または離脱)ではうまく説明されない。

いずれかを特定せよ

314.01(F90.2)混合して存在:過去6カ月間、基準A1(不注意)と基準A2(多動性−衝動性)をともに満たしている場合

314.00(F90.0)不注意優勢に存在:過去6カ月間、基準A1(不注意)を満たすが基準A2(多動性−衝動性)を満たさない場合

314.01(F90.1)多動・衝動優勢に存在:過去6カ月間、基準A2(多動性−衝動性)を満たすが基準A1(不注意)を満たさない場合

該当すれば特定せよ

部分寛解:以前はすべての基準を満たしていたが、過去6カ月間はより少ない基準数を満たしており、かつその症状が、社会的、学業的、または職業的機能に現在も障害を及ぼしている場合

現在の重症度を特定せよ

軽度:診断を下すのに必要な項目数以上の症状はあったとしても少なく、症状がもたらす社会的または職業的機能への障害はわずかでしかない。

中等度:症状または機能障害は、「軽度」と「重度」の間にある。

重度:診断を下すのに必要な項目数に多くの症状がある。またはいくつかの症状が特に重度である、または症状が社会的または職業的機能に著しい障害をもたらしている。

 

※参考文献

『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)

『カプラン 臨床精神医学テキスト』(メディカルサイエンスインターナショナル)

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