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学習障害

学習障害は、読字、書字、算数技能が期待されるものよりも有意に低い場合に診断されます。

DSM-IVには4つの学習障害の診断カテゴリーがあります。以下、順に説明していきます。

 

読字障害(Reading Disorder)

以前はディスレクシア(読字困難症:dyslexia)として知られていた読字障害は、単語認識能力の欠陥、ものわかりの悪さ、ゆっくりで不確かな読みが特徴です。

【診断】

患児の読字能力は、同程度の年齢、教育水準、測定された知能水準から期待されるものを有意に下回っています。ふつう7歳(2年生)までに同定されます。しかし、高い知能をもつ患児では特にそうですが、9歳(4年生)まで明らかにならない例もあります。関連する問題としては、言葉づかいの困難と単語を適切に配列することの困難があります。低年齢患児では羞恥や屈辱を感ずる傾向がある一方、高年齢患児は怒りっぽかったり、抑うつ的であり、自尊心の低下を示すことが多いです。

【疫学】

  1. 学齢期の小児の4%に発生します。
  2. 有病率は2〜8%の間にあります。
  3. 男女間に有病率の差はありません。

【原因】

  1. 6番染色体、15番染色体と関連がありえます。
  2. 後頭葉病変、および半球の異常との関連が指摘されています。
  3. 第1度親族の35〜40%に発生します。

【鑑別診断】

  1. 精神遅滞
    小児の年齢から期待される達成度に比べると、読字技能とともに他の技能が低い。
  2. 注意欠陥/多動性障害
    言語能力の困難は一貫しない。薬物により読字能力が改善します。
  3. 聴力障害、視覚障害
    スクリーニング検査によって除外すること。

【経過と予後】

学齢期の小児では、小学校を終えれば治療教育が不要となることが多いです。重篤な障害の場合、中学、高校まで援助が必要なこともあります。

【治療】

  1. 治療教育
    有効な治療教育プログラムは、まず、患児に、文字と音を正確に関連づけさせることから始まります。この技能がいったん習得されれば、治療教育の目標はより大きな成分、例えば、音節や単語などに拡大することができます。積極的対処法の進め方には、構造化され、個々人への配慮が行き届いた、読字のための小グループがあります。
  2. 精神療法
    適切な精神療法的手法があれば、併存する情緒と行動の障害を治療できます。両親へのカウンセリングが有効なこともあります。生活技能の向上は精神療法の重要な一構成要素です。 c. 薬物療法  ADHDなど、併存する精神疾患に対してのみ用いられます。

 

算数障害(Mathematics Disorder)

数字を習うことと思い出すこと、および数に関する基本的な事実を思い出してそれを適用することに困難があり、計算が遅く不正確です。

【診断】

患児の算数能力は、同程度の年齢、教育水準、測定された知能水準から期待されるものを有意に下回っています。数の名前や足し算、引き算の記号を身につけるのに難渋し、掛け算九九表を覚えたり、文章題に計算を適用したり、ある程度の速さで計算することが難しいです。

【疫学】

  1. 学齢期の小児の約1%に発生します。
  2. 女児に多いことがあります。

【原因】

  1. 遺伝因子に一部関連があります。
  2. 想定されるのは右半球の障害で、主として後頭葉領域です。

【鑑別診断】

  1. 精神遅滞 算数の困難には全般的な知的機能の障害が伴っている。
  2. ADHDまたは行為障害  診断に際して見逃さないこと。

【経過と予後】

の障害はふつう8歳(3年生)までに同定されます。しかし、6歳(1年生)ですでに見つかることも、10歳(5年生)まで遅れることもあります。中等度の算数障害をもち介入を受けない患児には、その後の学業の困難、恥辱、自己概念の形成不全、欲求不満、抑うつが合併することがあります。この合併症のために学校に行きたがらなくなったり、不登校、学業への意気喪失などが生ずることがあります。

【治療】

  1. 治療教育
    数学的概念を効率よく教えるとともに、練習の繰り返しを組み合わせます。
  2. 心理教育
    社会領域において何かを成し遂げたならば、陽性のフィードバックを与えます。

 

書字表出障害(Disorder of Written Expression)

文法や句読法を頻繁に間違え、綴りや字を書くのが不得意なのが特徴です。

【診断】

書字表出障害の患児は、同年齢の小児に比して、また知能のわりに、字を書いて文章を作るのがうまくないです。綴り方や句読法、書字、文章の構成が下手です。症状は小学生のうちに現れます。書字表出障害の小児は、不適切感をもち、学業成績が低いので、怒りっぽく、欲求不満をもちやすいです。重症例では、うつ病障害が併存することがあります。

【疫学】

  1. 学齢期の小児の約4%にみられます。
  2. 男児に約3倍多いです。

【原因】

  1. 読字障害と同様の原因が想定されています。
  2. 書字表出障害の患児とその第1度親族の一致率は非常に高いです。

【鑑別診断】

ADHDおよびうつ病性障害の併存により集中力が削がれることがあります。したがって、これらの障害を治療すると書字能力が改善することがあります。書字表出性障害には他のコミュニケーション(言語)障害や学習障害、例えば読字障害、受容−表出混合性言語障害、表出性言語障害、算数障害、発達性協調運動障害、破壊的行動障害、注意欠陥/多動性障害が併存することがあります。

【経過と予後】

重症例では、症状は7歳(2年生)までに顕在化します。より軽症の場合、10歳(5年生)まで、またはそれ以降に顕在化します。軽度から中等度程度の患児では、小学校の早い段階で治療教育を受ければ、ふつう予後はよいです。重症例では、連続的かつ広範囲にわたる治療教育が高校から大学まで必要になります。予後を左右する要因は、障害の重症度、介入を受けた年齢または学年、情緒または行動面の二次障害の有無です。

【治療】

  1. 治療教育
    つづり方の練習、文章を書く練習、文法の練習を継続して行います。集中的に個人のレベルに合わせた創作作文療法を行うと、さらなる効果が得られることがあります。
  2. 精神療法
    情緒と行動の二次障害がある場合には、個人、集団、家族療法などの心理療法が役に立つことがあります。

 

特定不能の学習障害(Learning Disorder Not Otherwise Specified)

DSM-IV-TRにおける特定の学習障害のどの診断基準も満たさないが、学習能力の障害はその小児の知的レベル、教育レベル、年齢から期待される水準を下回る場合のカテゴリーです。例えば、綴字能力の欠陥があります。

 

診断基準

DSM-W-TR
読字障害(Reading Disorder)
コード番号:315.00
  1. 読みの正確さと理解力についての個別施行による標準化検査で測定された読みの到達度が、その人の生活年齢、測定された知能、年齢相応の教育の程度に応じて期待されるものより十分に低い。
  2. 基準Aの障害が読字能力を必要とする学業成績や日常の活動を著明に妨害している。
  3. 感覚器の欠陥が存在する場合、読みの困難は通常それに伴うものより過剰である。

◆コード番号をつけるうえでの注意

一般身体疾患(例:神経疾患)あるいは感覚器の欠陥が存在するならば、その疾患をV軸にコード番号をつけて記録しておくこと。

算数障害(Mathematics Disorder)
コード番号:315.1
  1. 個別施行による標準化検査で測定された算数の能力が、その人の生活年齢、測定された知能、年齢に相応の教育の程度に応じて期待されるものよりも十分に低い。
  2. 基準Aの障害が算数能力を必要とする学業成績や日常の活動を著明に妨害している。
  3. 感覚器の欠陥が存在する場合、算数能力の困難は通常それに伴うものより過剰である。

◆コード番号をつけるうえでの注意

一般身体疾患(例:神経疾患)あるいは感覚器の欠陥が存在するならば、その疾患をV軸にコード番号をつけて記録しておくこと。

書字表出障害(Disorder of Written Expression)
コード番号:315.2
  1. 個別施行による標準化検査(あるいは書字能力の機能的評価)で測定された書字能力が、その人の生活年齢、測定された知能、年齢相応の教育の程度に応じて期待されるものよりも十分に低い。
  2. 基準Aの障害が文章を書くことを必要とする学業成績や日常の活動(例:文法的に正しい文や構成された短い記事を書くこと)を著明に妨害している。
  3. 感覚器の欠陥が存在する場合、書字能力の困難が通常それに伴うものより過剰である。

◆コード番号をつけるうえでの注意

一般身体疾患(例:神経疾患)あるいは感覚器の欠陥が存在するならば、その疾患をV軸にコード番号をつけて記録しておくこと。

特定不能の学習障害(Learning Disorder Not Otherwise Specified)
コード番号:315.9

このカテゴリーは、どの特定の学習障害の基準も満たさない学習の障害のためのものである。このカテゴリーには、3つの領域(読字、算数、書字表出)のすべてにおける問題があって、個々の技能を測定する検査での成績は、その人の生活年齢、測定された知能、年齢相応の教育の程度に応じて期待されるものより十分に低いわけではないが、一緒になって、学業成績を著明に妨害しているものを含めてもよい。

◆コード番号をつけるうえでの注意

一般身体疾患(例:神経疾患)あるいは感覚器の欠陥が存在するならば、その疾患をV軸にコード番号をつけて記録しておくこと。

 

ICD-10
F81 学力の特異的発達障害 (Specific developmental disorders of scholastic skills)

【概要】

F81.0 特異的読字障害

F81.1 特異的綴字[書字]障害

F81.2 特異的算数能力障害[算数能力の特異的障害]

F81.3 学力の混合性障害 F81.8 他の学力の発達障害

F81.9 学力の発達障害、特定不能のもの

【序論】

学力の特異的発達障害の概念は、会話および言語の特異的発達障害の概念(F80.-参照)に対応し、その定義や評価についての問題点は本質的に同じである。これらは、技能の正常な習得パターンが発達早期から損なわれる障害である。その欠陥は単なる学習の機会の欠如のためではなく、またいかなる型の後天的な脳損傷や疾患によるものでもない。むしろ、障害の多くはある種の生物学的な機能不全に由来する認知過程の異常から生じたものと考えられる。他のほとんどの発達障害のように、この障害もだいたいは女児より男児によく起こる。  診断にあたっては、5つの問題点が生じる。

第一に、学業成績の正常範囲内の偏りからこの障害を鑑別する必要がある。この論点は言語障害に対してのものと同様であり、異常を評価するために提案された4つの基準が同じく適用される(もちろん言語能力の基準を学業成績に適用する際には修正が必要である。

第二に、発達経過を考慮に入れる必要がある。このことは2つの異なった理由により重要である:

  1. 重症度:
    7歳時と14歳時における1年間の読みの遅れは、まったく違った意味をもっている。
  2. パターンの変化:
    就学前の言語遅滞では、話し言葉に関する限り遅滞は解消されるが、引き続き特異的読字遅滞が起こってくるのがふつうである。次いでこの障害は青年期になって解消する。成人早期に残される主な問題は重度の語の綴りの障害となる病態は変わらないが、加齢に伴ってそのパターンが変化する。診断基準はこのような発達に伴う変化を考慮する必要がある。

第三に、学力は、学び教えられなければならないという難しさがある。学力は生物学的成熟だけの関数ではない。小児の技能の水準は、子ども自身の個人的特性によるのはもちろんのこと、必然的に家族環境と学校教育にもよる。残念ながら適切な経験の欠如による学習困難を、ある個々の障害による学業困難から鑑別する簡単で明白な方法はない。この区別が現実的で、臨床的に妥当であることを十分に支持する根拠はあるが、個々の症例では診断は難しい。

第四に、認知過程の異常が基礎にあるという仮説は種々の研究が支持しているが、個々の小児で、読字困難の基礎となる異常を、貧弱な読字技能から生じる、あるいはそれと関係した異常から鑑別する簡単な方法はない。読みの障害が複数の型の認知の異常に由来しているかもしれないという所見が、この問題を複雑にしている。

第五に、学力の特異的発達障害を下位分類する最良の方法が依然として不確定のままであるということである。  小児は家庭と学校で、読み、書き、綴り、算数の計算と出会い学習する。正規の学校教育が始まる年齢、学校で習う授業科目、そして以後それぞれの年齢で小児が習得するのを期待される技能は、国によって大きな相違がある。この期待度の不均等さは小学校時代(すなわち11歳ごろになるまで)でより大きいものであり、そのため国際間で妥当性のある学力の障害の操作的な定義を作成する際の論点は複雑になっている。

たとえそうであっても、すべての教育状況の中で、学童のそれぞれの年齢群において学業の達成に幅があり、ある小児で全体的知能水準との関連からみて、特定の領域での成績が低いということがあるのは、明らかである。  学力の特異的発達障害(SDDSS)は、学力の習得に特異的で重大な障害があることが明らかな障害群からなっている。これらの学習の障害は、他の障害(たとえば精神遅滞、著しい神経学的欠陥、矯正できない視力や聴力上の問題、あるいは情緒障害)に併発して起こることはあっても、その直接の結果ではない。SDDSSはしばしば他の臨床症候群(たとえば注意欠陥障害または行為障害)、あるいは他の発達障害(たとえば運動機能の特異的発達障害あるいは会話および言語の特異的発達障害)とともに起こる。

SDDSSの病因は不明であるが、非生物学的な要素(たとえば学習の機会や教育の質)と互いに影響しあって発現するような生物学的な要素を第一義的なものとする想定がある。これらの障害は生物学的な成熟に関連しているが、この障害をもつ小児が常に正常範囲の下限にあり、やがて「追いつく」だろうということは意味していない。多くの症例で、障害の痕跡はおそらく青年期から成人期まで継続する。それにもかかわらず、診断上必要な点は、学校教育の早期に何らかの形で障害が現れることである。子どもは学年が進むと学業成績が低下することがあるが(興味の不足、欠陥のある教育、情緒障害、課題が要求するパターンの増加や変更のために)、SDDSSの概念にはこのような問題は含まれない。

[診断ガイドライン]

どの学力の特異的発達障害の診断にも、いくつかの基本的な必要条件がある。

第一に、特定された学力に、臨床的に有意な程度の障害がなければならない。これは教育用語から定義されるような重症度(すなわち、学童の3%以下に起こりと予想される程度)、先行する発達上の問題(すなわち、学業困難は就学前に発達遅滞あるいは偏りが先行している―最も多いのは会話や言語において)、関連のある障害(注意障害、多動、情緒障害あるいは行為障害のような)、パターン(すなわち、正常な発達には通常みられない質的以上の存在)、そして反応性(すなわち、家庭および/または学校での援助が増えても、学業困難が迅速にあるいは容易には軽減することがない)に基づいて判断しうる。

第二に、障害は単に精神遅滞あるいは比較的軽度の全体的知能障害から説明できないという意味で、特異的なものでなければならない。IQと学業成績は正確には並行しないので、この区別は個別的に施行される標準化された、関連する文化や教育システムに適合した、学力とIQの検査に基づいてのみなされうる。このような試験は、どの暦年齢のどのIQの水準でも、平均的に予想される達成水準に関する資料を提供する統計表と関連させて使用すべきである。この統計表が必要となるのは、統計学的回帰効果が重要だからである。精神年齢から学業成績年齢を差し引くことに基づく判断は、重大な誤りと結びつきやすい。しかしながら、日常の臨床では、ほとんどの例でそこまでは要求されないであろう。したがって、臨床ガイドラインはただ単に、小児の達成レベルがその小児の精神年齢から期待されるレベルよりもはるかに下でなければならない、ということになる。

第三に、障害は発達性のものでなければならず、その意味は、教育の早期から存在し、後になって教育課程で獲得されたものであってはならない、ということである。小児の学業における進歩のあとは、このことに関して証拠を与えるはずである。

第四に、学業困難の十分な理由となりうる外的要因があってはならない。上で指摘したように、一般にSDDSSの診断は、小児の発展にとって本質的な要因に関連した学業成績の臨床的に有意な障害についての、明確な証拠に基礎を置くべきである。しかしながら、効果的に学習するためには、小児は適切な学習の機会をもたなければならない。したがって、もし学業成績の不良が、かなり長期間学校を欠席し、家庭でも教えられずにいることや、非常に不十分な教育しか受けられないことの直接の結果であることが明らかならば、その障害はここに分類すべきではない。学校を頻回に欠席したり、転校のために教育が中断されるだけでは、通常、SDDSSの診断をくだすのに必要な程度の学業遅滞を生じさせるに十分でない。しかしながら、学校教育が貧困であれば、問題を複雑にしたり大きくしたりするかもしれないので、このような場合は学校の要因を、ICD-10・第XXI章からZコードでコードすべきである。

第五に、SDDSSは矯正されない視覚あるいは聴覚の障害に直接起因するものであってはならない。

【鑑別診断】

明らかに診断できるような神経学的障害がまったくない状態で生じたSDDSSと、脳性麻痺のような、何らかの神経学的な状態で二次的に生じたSDDSSとを鑑別することは、臨床的にきわめて必要なことである。

実際この鑑別が難しいことがしばしばあり(多数の「ソフトな」神経学的特徴の意義が不確実であるため)、SDDSSのパターンあるいは経過のいずれにおいても、明らかな神経学的機能不全の有無による明確な鑑別を示す研究所見もない。したがって、神経学的機能不全は診断基準の一部を形成するものではないが、しかし関連する障害があれば、適切な神経学的部門の分類の中に別にコードする必要がある。

F81.0 特異的読字障害 (Specific reading disorder)

この障害は読字力の発達の著しい特異的障害を主要徴候とするもので、単に精神年齢、視覚障害の程度あるいは不適切な学校教育によって説明されるものではない。読みの理解力、読みによる単語認知、声による読字力、および読みを必要とする課題の出来ばえがすべて障害されることがある。綴字困難が、特異的読字障害に伴うことが多く、読字がかなり進歩したあとでさえ、青年期に入っても残存していることがしばしばある。特異的読字障害をもった小児は、しばしば会話および言語の特異的発達障害の既往をもっており、現在の言語機能を包括的に評価することによって、同時に発生している些細な障害が明らかになることがしばしばある。学業上の失敗に加えて、とくにそれ以後の小学校や中学校時代には学校を欠席したり、社会適応の諸問題が併発することが多い。この病態は現在知られている言語すべてにみられるが、言語の性質や書かれる文字によって出現頻度が変わってくるかどうかについては、確かなことはわからない。

【鑑別診断】

診断ガイドライン】 小児の読みの出来ばえは、年齢、全体的知能、学校での処遇をもとに予想される水準を明らかに下回っていなければならない。これは個別的に施行される、標準化された読みの正確さと理解力の検査に基づいて評価するのが最もよい。読みに関する問題の正確な性質は、予想される読みの水準、そして言語、文字に依存する。しかしながら、アルファベットの早期の学習段階では、アルファベットを暗唱すること、文字の正確な名称を言うこと、簡単な韻をふむこと、そして(正常な聴力であるにもかかわらず)音を分析したり分類したりすることに困難がみられる場合がある。後になって次のような音読の誤りが起こる場合がある:

  1. 語あるいは語音の一部の省略、置き換え、歪み、あるいは付加。
  2. 読みの速度が遅いこと。
  3. 読みはじめを誤る、なかなか読み出せない、あるいは本文の中で「読んでいる箇所を見失う」こと、および不正確な言い回し。
  4. 文章の中での単語あるいは単語の中での文字の反転。 また次に示されるような読みの理解力の不足がみられることもある。
  5. 読んだことを思い出せない。
  6. 読んだ素材から結論や推論を引き出すことができない。
  7. 読んだ物語についての質問に答えるために、特定の物語から得られた情報よりむしろ背景的な情報としての一般的知識を使用すること。

小児期の後期や成人期において、綴字困難が読字の困難よりもいっそう重篤になるのがふつうである。綴字困難はしばしば発音の誤りを伴っているのが特徴であり、読字と綴字の問題はともに一部は音声学的な解析の障害に由来しているようにみえる。発音通りでない言語を読まなければならない際の、綴字の誤りの性質や頻度についてはほとんど知られていないし、非アルファベット性文字における誤りの型についてもほとんど知られていない。

読みの特異的発達障害には、会話あるいは言語の発達障害の既往が先行するのが一般的である。他の場合には、小児は言語の発達指標を正常の年齢で通過することがあり、音の分類や、韻をふむことの問題、そしておそらく話音の識別、聴覚的経時的記憶、聴覚性の連想の欠陥で示されるような聴覚性処理の困難をもっている。またある場合には視覚性処理に問題(たとえば文字識別)がみられることがある。しかしながら、これらは、読字を学習し始めたばかりの小児には一般的にみられることであり、したがって、読字の貧困さに直接関係するものではないであろう。しばしば多動や衝動に伴って注意の困難もまた一般的である。就学前の発達困難の細かいパターンは、その重症度がそうであるように、子どもによってかなりさまざまであるが、それでもなおこのような困難は通常(常にではないが)存在している。

情緒障害および/または行為障害の合併も学童期にはよくみられる。情緒的な問題は学齢の早期にみられるのがふつうであるが、行為障害や多動症候群が小児期後期や青年期に最も多く存在するもののように思われる。自己評価の低さもふつうであり、学校への適応や友人関係もしばしば問題となる。

<含>「読みの遅れ」

 発達性失読症

 特異的読字遅滞

 読字障害に伴う綴字困難

<除>後天性失読および綴字障害(R48.0)

 情緒障害に二次的に生じた後天性読字困難(F93.-)

 読字困難を伴わない綴字障害(F81.1)

F81.1 特異的綴字[書字]障害 Specific spelling disorder

この障害の主要徴候は特異的読字障害の既往のない、綴字力の発達における特異的で有意な障害であり、単に低い精神年齢、視力の問題あるいは不適切な学校教育では説明できない障害である。口頭で綴りを言う力と語を正確に書き出す力のいずれも障害される。手で書くことだけが問題である小児は、含めるべきではないが、ある場合には綴字の困難が書くことの問題を伴っていることがある。特異的読字障害に通常見られたパターンと違って、この綴字の誤りは音声学的には正確である傾向が強い。

【診断ガイドライン】

小児の綴字の出来ばえは、全体的知能、学校での処遇に基づいて予想される水準を明らかに下まわっていなければならず、そして最も好ましいのは個別的に施行される標準化された綴字検査に基づいて評価することである。小児の読字能力は(正確さと理解力の両方に関して)正常範囲内にあり、重大な読字困難の既往があってはならない。綴字における困難は主としてきわめて不適切な教育、視覚、聴覚あるいは神経学的機能の欠陥の直接的な影響によるものがあってはならず、そして神経学的、精神医学的、あるいは他の障害の結果として獲得したものであってはならない。

「純粋な」綴字障害は、綴字困難に関連した読字障害と違うことは知られているが、特異的綴字障害の前駆様態、経過、関連因子、あるいは転帰についてはほとんど知られていない。

<含>特異的綴字遅滞(読字障害を伴わない)

<除>後天性綴字障害(R48.8)

 読字障害に関連した綴字困難(F81.0)

 主に不適切な教育に帰する綴字困難(Z55.8)

F81.2 特異的算数能力障害[算数能力の特異的障害]
(Specific disorder of arithmetical skills)

この障害には、ただ単に一般的な精神遅滞あるいは非常に不適切な学校教育だけでは説明できないような算数の特異的障害が含まれている。この障害は(代数学、三角法、幾何学あるいは微積分学のような、より抽象的な数学力よりはむしろ)加減乗除のような基本的な計算力の習得に関係している。

【診断ガイドライン】

小児の算数の出来ばえは、全体的知能、学校での処遇に基づいて予想される水準を明らかに下まわっていなければならず、そして最も好ましいのは個別的に施行される標準化された算数テストに基づいて評価することである。読字力と綴字力は精神年齢から予想しうる正常な範囲内になければならず、なるべく個別的に施行される適切に標準化された検査で評価すべきである。算数の困難は主としてきわめて不適切な教育、視覚、聴覚あるいは神経学的機能の欠陥の直接的な影響によるものがあってはならず、そして神経学的、精神医学的、あるいは他の障害の結果として獲得したものであってはならない。  算数障害は読字障害よりも研究されていないので、前駆様態、経過、関連因子および転帰についての知識はごく限られている。しかしながら、この障害のある小児は聴覚−知覚力と言語力は正常範囲内にある傾向がみられる。しかし視覚力−空間および視覚−知覚力は損なわれている。このことは多くの読字障害の小児と対照的である。社会−情緒−行動上の問題を伴っている小児もあるが、その特徴や出現頻度についてはほとんど知られていない。とりわけ社会的相互関係の困難が共通している、と示唆されるようになっている。

算数の困難さはさまざまな現れ方をするが、次のようなものが含まれる。特殊な算数操作の基本となる概念を理解できないこと。算数用語や符号の理解に欠けること、数字を認識しないこと、標準的な算数操作を行うことが困難であること、考えている算数問題に関してその数字が適当かを理解することが困難であること。数字を正しく並べることが困難である、あるいは計算中に小数や記号を挿入することが困難であること、算数計算の空間的な組立てが下手であること、掛け算表を十分に学習できないこと。

<含>発達性計算不能

 発達性算数障害

 発達性ゲルストマン症候群

<除>後天性算数障害(計算不能)(R48.8)

 読字あるいは綴字障害に関連した算数の困難(F81.1)

 主に不適切な教育に帰する算数の困難(Z55.8)

F81.3 学力の混合性障害(Mixed disorder of scholastic skills)

これは定義が不完全で、適切に概念化されていないが、しかし必要な、障害の残遺カテゴリーであり、算数と、読字あるいは綴字の両方が明らかに損なわれてはいるが、ただ単に全般的な精神遅滞あるいはきわめて不適切な学校教育によっては説明できないものである。このカテゴリーは、F81.2およびF81.0もしくはF81.1の基準を満たす障害に使用すべきである。

<除>算数能力の特異的障害(F81.2)

 特異的読字障害(F81.0)

 特異的綴字障害(F81.1)

F81.8 他の学力の発達障害(Other developmental disorders of scholastic skills)

<含>発達性表出性綴字障害

F81.9 学力の発達障害、特定不能のもの
(Developmental disorder of scholastic skills, unspecified)

このカテゴリーはできるだけ避けるべきであり、ただ単に精神遅滞、視覚障害、あるいは不適切な学校教育によっては説明できない、学習の重大な障害がある特定不能な障害についてのみ使用すべきである。

<含> 特定不能の知識習得障害

 特定不能の学習困難

 特定不能の学習障害

【参考・引用文献】

・DSM-W-TR精神疾患の分類と診断の手引 新訂版 高橋三郎他訳 2010 医学書院

・カプラン精神医学ハンドブック 融道男他訳 2010 メディカルサイエンスインターナショナル

・ICD-10精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン 融道男他監訳 2009 医学書院

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