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特異的読字障害

F81.0 特異的読字障害

Specific reading disorder

 

疾患の具体例

7歳、男児。小学校に入っても、ひらがなを覚えることができません。学校で、黒板に書かれた文字を読まされた時は、一文字ずつゆっくり区切りながら読んだり、途中で止まったり、いくつも読み間違いをしたりしても気がつきません。とりわけ、小さな「っ」や、形の似た字「あ・お」などを読めず、授業の内容もよく理解できません。クラスメートからいじめにあい、学校を休みがちになっています。教科書を音読させられる授業を非常に恐れ、決まって欠席しています。これまで注意欠陥多動性障害とは診断されましたが、知的障害はありません。

 

特徴

WHOの診断ガイドライン「ICD-10」で解説されている「特異的読字障害」は、同じ年齢、同等の知的能力の子どもに期待されるよりも、著しく文字を読むことが困難な障害です。アメリカ精神医学会の診断と統計マニュアル「DSM-5」では、「限局性学習症/限局性学習障害」の一種として分類されています。

特異的読字障害は、精神年齢の発達の遅さや、視覚障害があること、不適切な学校教育などを勘案してもなお、著しく読字が困難な状態です。文字を読んで理解すること、単語を認識すること、声に出して読むことがうまくできません。複雑な文法の理解、推論することも困難です。音読する時には、言葉を省略したり、つけ加えたり、変形させたりして読み間違えます。印刷された文字の特徴や大きさを区別することも苦手です。読むスピードが遅く、理解力は最小限にとどまります。

何かを読まなくてはならない課題は低い評価を受けます。そのため、学校を欠席しがちで、学校生活に適応できないことから抑うつ症状を示すこともあります。次第に、学業そのものへの意欲も低下し、問題を悪化させます。社会に出てからもうまく適応できないことがよく見られます。

また、多くの場合、文字を書くことや会話をすることの困難も伴っています。しばしば、青年期に入ってもそれらの症状が続きます。

 

有病率

『カプラン 臨床精神医学テキスト』によると、アメリカの学童のおよそ4%が読字障害を持つと推定されています。学校や臨床の場では男児のほうが女児の3〜4倍も多く見られますが、疫学研究によると性差はないと報告されています。読字障害のある男児は、行動上の問題を伴う場合が多いため、女児より発見されやすいためだと考えられています。なお、成人の場合は明らかな性差はありません。

 

経過

多くの場合、小学校2年生までに明らかになります。知能が高い子どもは、記憶や推測によって、読めないことをカバーできるため、4年生頃まで特異的読字障害が気付かれないこともあります。

また、特に治療を受けなくても小学校2年生までに印刷された文字を少し読めるようになります。しかし、治療を受けないまま3年生になると、読字障害は残ったままになります。理想的には、幼稚園か小学校1年生の早い時期に治療を開始することです。軽症の場合は、1〜2年生の終わりには治療が必要なくなります。重症例や、障害の強さなどによっては、中学・高校まで治療が続くこともあります。

 

原因

特異的読字障害を特定できる原因はわかっていません。遺伝的、発達的、環境的要素などが関係していると考えられています。注意欠陥多動性障害のある子どもは、高い割合で読字障害を示します。

 

治療

主に教育的管理を行います。効果的な治療計画の多くは、文字と音を正確に結びつける読み方から教え始めます。文字-音結合ができるようになれば、音節と単語のような、もう一歩進んだ読字要素を学ぶことができます。

精神療法に関しては、治療者と患者さんの関係性が治療を成功させるカギとなります。できる限り、患者さんの社会機能水準に近い学年に在籍できるよう配慮し、読みに関する特別な課題を与えるべきとされています。

 

診断基準:ICD-10

小児の読みの出来ばえは、年齢、全体的知能、学校での処遇をもとに予想される水準を明らかに下回っていなければならない。これは個別的に施行される、標準化された読みの正確さと理解力の検査に基づいて評価するのが最もよい。読みに関する問題の正確な性質は、予想される読みの水準、そして言語、文字に依存する。しかしながら、アルファベットの早期の学習段階では、アルファベットを暗唱すること、文字の正確な名称を言うこと、簡単な韻をふむこと、そして(正常な聴力であるにもかかわらず)音を分析したり分類したりすることに困難がみられる場合がある。後になって次のような音読の誤りが起こる場合がある:

  1. 語あるいは語音の一部の省略、置き換え、歪み、あるいは付加。
  2. 読みの速度が遅いこと。
  3. 読みはじめを誤る、なかなか読み出せない、あるいは本文の中で「読んでいる箇所を見失う」こと、および不正確な言い回し。
  4. 文章の中での単語あるいは単語の中での文字の反転。 また次に示されるような読みの理解力の不足がみられることもある。
  5. 読んだことを思い出せない。
  6. 読んだ素材から結論や推論を引き出すことができない。
  7. 読んだ物語についての質問に答えるために、特定の物語から得られた情報よりむしろ背景的な情報としての一般的知識を使用すること。

小児期の後期や成人期において、綴字困難が読字の困難よりもいっそう重篤になるのがふつうである。綴字困難はしばしば発音の誤りを伴っているのが特徴であり、読字と綴字の問題はともに一部は音声学的な解析の障害に由来しているようにみえる。発音通りでない言語を読まなければならない際の、綴字の誤りの性質や頻度についてはほとんど知られていないし、非アルファベット性文字における誤りの型についてもほとんど知られていない。

読みの特異的発達障害には、会話あるいは言語の発達障害の既往が先行するのが一般的である。他の場合には、小児は言語の発達指標を正常の年齢で通過することがあり、音の分類や、韻をふむことの問題、そしておそらく話音の識別、聴覚的経時的記憶、聴覚性の連想の欠陥で示されるような聴覚性処理の困難をもっている。またある場合には視覚性処理に問題(たとえば文字識別)がみられることがある。しかしながら、これらは、読字を学習し始めたばかりの小児には一般的にみられることであり、したがって、読字の貧困さに直接関係するものではないであろう。しばしば多動や衝動に伴って注意の困難もまた一般的である。就学前の発達困難の細かいパターンは、その重症度がそうであるように、子どもによってかなりさまざまであるが、それでもなおこのような困難は通常(常にではないが)存在している。

情緒障害および/または行為障害の合併も学童期にはよくみられる。情緒的な問題は学齢の早期にみられるのがふつうであるが、行為障害や多動症候群が小児期後期や青年期に最も多く存在するもののように思われる。自己評価の低さもふつうであり、学校への適応や友人関係もしばしば問題となる。

<含>「読みの遅れ」

 発達性失読症

 特異的読字遅滞

 読字障害に伴う綴字困難

<除>後天性失読および綴字障害(R48.0)

 情緒障害に二次的に生じた後天性読字困難(F93.-)

 読字困難を伴わない綴字障害(F81.1)

 

診断基準:DSM-5

※限局性学習症/限局性学習障害より

該当すれば特定せよ

315.00(F81.0)読字の障害を伴う:

読字の正確さ

読字の速度または流暢性

読解力

注:失読症は単語認識の正確さまたは流暢性の問題。判読や綴字の能力の低さにより特徴づけられる学習困難の様式について用いられる代替用語である。失読症がこの特別な困難さの様式を特定するために用いられた場合、読解力または数学的推理といった付加的な困難さを特定することも重要である。

 

※参考文献

『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)

『カプラン 臨床精神医学テキスト』(メディカルサイエンスインターナショナル)

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