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睡眠時驚愕症(夜驚症)

F51.4 睡眠時驚愕症(夜驚症) Sleep terrors (night terrors)

ノンレム睡眠からの覚醒障害 Non Rapid Eye Movement Sleep Arousal Disorder

疾患の具体例

9歳、男子。3つ年上の兄と同室で眠っていますが、ある日、寝入ってから30分ほどたったころ「ウワー!」という絶叫と同時にベッドから転げ落ちました。驚いた兄が声をかけると、後ずさりをしながら逃げ惑い、ドアノブにつかまって泣き出しました。ほどなくして、声を聞いた母親が子ども部屋にやってくると、男子は力が抜けたように座り込んでいます。母親がベッドに誘導すると、素直に眠りつきました。

 

特 徴

夜、眠っている時に突然起き上がり、極度のパニックを起こす障害です。突然、目を開けて絶叫したり、激しく体を動したりするほか、心悸亢進、過呼吸、瞳孔散大、発汗といった強い自律神経興奮を示します。実際に部屋の外へ出ることは滅多にないものの、逃げだそうとするかのように扉に向かって駆け出すことがしばしばみられます。症状は通常1〜10分程度ですが、1時間ほどにおよぶこともあります。

パニックが起きている時、他人が声を掛けたり、なだめたりしようとしても無効で、患者さんの恐怖をさらに助長しかねません。患者さんは、数分間、見当識障害(自分がどこにいるかがわからない)を来している場合があるためです。

症状は、通常、夜間睡眠のはじめの3分の1の間に起きます。通常は一晩に1回のパニックですが、間隔を置いて数回にわたることもあります。まれに、昼寝の際にも生じます。睡眠から目覚めたあと、パニック中の出来事は思い出せないことが普通です。そのため、パニックの最中にけがをする危険性が高いとされています。

この障害は、とりわけ子どもに多くみられます。いわゆる「夜泣き」も同じような症状が現れますが、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている場合に「睡眠時驚愕症(夜驚症)」として診断されます。

なお、睡眠時驚愕症は、「睡眠時遊行症」と密接に関係しています。最近では、この2つの状態は疾病分類上同一のものの一部ではないかと考えられています。 「

 

有病率

睡眠時驚愕症の一般人口の有病率は不明です。小児期に最も多く起こり、年齢が増すにつれて頻度が低下します。いわゆる睡眠時驚愕エピソード(睡眠時驚愕症のように苦痛や障害を伴わないが症状がある)は、生後18ヵ月で36.9%、生後30ヵ月で19.7%、成人では2.2%と報告されています。男児のほうが女児より多いものの、成人になると男女比は同等になります。

 

原 因

鎮静薬の使用や、断眠、睡眠覚醒スケジュールの乱れ、疲労、身体的あるいは情動的ストレスは、睡眠時驚愕エピソードの可能性を増大させます。また、家族歴も関係しています。第一度生物学的親族では、この障害の有病率が10倍も高いとされています。二卵性双生児は、一卵性双生児に比べて多くみられます。

 

治 療

特別な治療が必要になることは滅多にありません。ストレスの原因となる家族状況の調査は重要で、時に個人精神療法もしくは家族療法が有用です。薬物療法が必要とされるのはまれですが、就寝時の少量のジアゼパム(セルシン)が状態を改善し、完全に発作を取り除くこともあります。

 

診断基準:ICD-10

以下の臨床特徴は確定診断のために必須である。

  1. 支配的な症状は1回あるいはそれ以上の恐怖の声を伴って目覚めるエピソードで、強い不安、体動および心悸亢進、過呼吸、瞳孔散大、発汗のような自律神経系の過活動によって特徴づけられる。
  2. これらの反復するエピソードは、典型的には1〜10分続き、通常は夜間睡眠のはじめの3分の1の間に起こる。
  3. 睡眠時驚愕症の患者の行動に影響を及ぼそうとする他人の努力に対しては、反応は比較的鈍く、ほとんど常に無効であり、このような努力の後も少なくとも数分間は見当識障害と保続的な動作が続く。
  4. エピソード中のことは、たとえ思い出せたとしても最小限のことだけである(通常は1つか2つの断片的な心的イメージに限定される)
  5. 脳腫瘍やてんかんなどの身体的障害のどのような所見もない。

 

診断基準:DSM-5

A. 睡眠から不完全に覚醒するエピソードが反復し、通常は主要睡眠時間帯の最初の1/3の間に起こり、以下のいずれかの症状を伴う。

  1. 睡眠時遊行症型:睡眠中にベッドから起き上がり歩き回るエピソードの反復、睡眠時遊行の間、その人はうつろな表情で視線を動かさず、他の人が話しかけようとしてもあまり反応せず、覚醒させるのがきわめて困難である。
  2. 睡眠時驚愕症型:睡眠から突然驚愕覚醒するというエピソードの反復で、通常は恐怖の叫び声で始まる。各エピソード中に、強い恐怖と瞳孔散大、頻脈、呼吸促迫、発汗など自律神経系緊張の徴候がある。エピソード中、他の人達が落ち着かせようとしても反応がかなり悪い。

B. 夢の映像はまったく、または少ししか早期されない(例:たった1つの情景しか)。

C. エピソードについての健忘がある。

D. そのエピソードは、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

E. その障害は、物質(例:乱用薬物、医薬品)による生理学的作用によるものではない。

F. 併存する精神疾患または医学的疾患では、睡眠時遊行症または睡眠時驚愕症のエピソードを説明できない。

※参考文献

『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)

『カプラン 臨床精神医学テキスト』(メディカルサイエンスインターナショナル)

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