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こころの病気のはなし > 専門編 > 非器質性過眠症

非器質性過眠症

F51.1 非器質性過眠症 Nonorganic hypersomnia

過眠障害 Hypersomnia Disorder

 

疾患の具体例

29歳、男性。トラックの運転手として働いています。数年前にうつ病を患い、通院していますが、何とか仕事を続けていました。ある日、いつものように運転をしていると、「今どこにいるんだ?」と勤務先から電話がありました。目的地を通り越して30分も運転を続けていたのです。その間、何をしていたかは覚えていません。さらに数日後には、1時間以上も寝坊をして、会社から厳しく注意されました。実は、男性は高校生くらいの頃から寝起きが悪く、しばしば学校に遅刻していました。大人になった今でも、休日は10時間以上も寝てしまいますが、起きても体がだるいままです。また、昼間も眠くて仕方なく、時折、トラックを停車して昼寝をしていました。自分でも眠り過ぎではと悩み、睡眠障害外来を受診すると「非器質性過眠症」と診断されました。

 

症 状

過眠症は、睡眠不足ではないのに長時間の睡眠、昼間の無意識な睡眠、睡眠惰性(睡眠から覚醒したあとの寝ぼけ)などが生じる疾患です。主要な睡眠(多くは夜間)が9時間以上続く人もいます。しかし、長時間眠ったにもかかわらず、回復感がなく、目覚めが悪いのが特徴です。昼寝も長くなりがちで、だいたい1時間以上は続きます。

また、朝の起床や昼寝からの目覚めが困難で、起きてすぐは混乱したり、闘争的な態度をとったりすることもあります。記憶の欠如、見当識障害(時間、場所がわからない)、ふらふらした感覚が起こる人もおり、それらは数分から数時間持続することがあります。

症状が進むと、自分では無意識のうちに自動行動をとる可能性もあります。例えば、車を運転中、ぼんやりしていたら目的地から数qも過ぎてしまうようなことです。また、意図しない睡眠が起きるのは、読書中やテレビを見ている時、長距離運転中など、刺激が少ない状況で多く見られます。重症例では仕事中や会議中、社交的な集まりのような場でも眠りたくなります。料理をしていたり、何か機械を操作していたりする時に眠ってしまう危険性もあります。朝、決められた時間に出社、または登校できないことも珍しくなく、過眠症は仕事上や社会関係上でトラブルの原因になりがちです。多くの患者さんは、就業日には何とか睡眠時間を減らすことができますが、週末や休日になると著しく睡眠時間が増加します(最大3時間まで)。

なお、ここでいう過眠症は、「ナルコレプシー」(日中に何度も居眠りを繰り返す疾患)とは別の疾患です。ナルコレプシーは、通常、喜怒哀楽のいずれかが高まったあと、急に脱力する「情動脱力発作」、寝入りばなに怖い幻覚を見る「入眠幻覚」、手も足も動かない金縛りになる「睡眠麻痺」などの副次症状が1つ以上存在します。

 

有病率

日中の眠気を訴えて睡眠障害外来を受診する人の約5〜10%が、過眠症だと考えられています。男女差はありません。過眠症の患者さんの約80%が睡眠後も回復感がないことを訴え、同じ数の人が朝の覚醒困難を感じています。

 

経 過

過眠症の発症年齢は平均17〜24歳で、最初の症状が出てから10〜15年で診断されます。数週間〜数ヵ月かけて徐々に進行します。また、持続性の経過をとり、重症度が進行する人もいます。極端な例では、睡眠エピソードが20時間に及びます。

 

原 因

過剰な睡眠は、心理的ストレスやアルコールの使用によって、一時的に増加することがあります。 他に、ウイルス感染が過眠に先行、あるいは伴うとも報告されています。例えばHIV肺炎、伝染性単核症、ギランバレー症候群などです。

はっきりした器質的原因がない場合は、精神障害と関連していることが少なくありません。双極性感情障害のうつ病相、反復性うつ病性障害、あるいはうつ病エピソードの症状として、してしばしば認められます。

 

診断基準:ICD-10

以下の臨床的特徴は、確定診断のために必須である。

  1. 昼間の過剰な睡眠、あるいは睡眠不足によらない睡眠発作、および/または目覚める際完全に覚醒した状態への移行が長引くこと(寝ぼけ)。
  2. 睡眠障害は毎日起こり、少なくとも1ヵ月以上続くか、あるいはもっと短い持続期間が反復する。そして患者にひどい苦悩を与え、通常の日常生活活動の妨げとなる。
  3. ナルコレプシーの副次症状(夜間の呼吸停止、典型的な間歇的いびきなど)の欠如。

もし過眠が単に感情障害などの精神障害の一症状として生じているならば、診断は基礎にある精神障害とすべきである。しかしながら他の精神障害をもった患者でも、過眠を主訴としているならば、心因性過眠症という診断を付け加えるべきである。もし他の診断がつかない時は、このコードを単独で使用すべきである。

 

診断基準:DSM-5 (過眠障害)

A.主な睡眠時間帯が少なくとも7時間持続するにもかかわらず、過剰な眠気(過眠)の訴えがあり、少なくとも以下の症状のうち1つを有する。

  1. 同じ日のうちに、繰り返す睡眠期間がある、または睡眠に陥る。
  2. 1日9時間以上の長い睡眠エピソードがあっても回復感がない(すなわち、爽快感がない)
  3. 急な覚醒後、十分に覚醒を維持するのが困難である。

B.その過眠は、少なくとも1時間に3回起き、3ヵ月間以上認められる。

C.その過眠は、意味のある苦痛、または認知的、社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を伴っている。

D.その過眠は、他の睡眠障害(例:ナルコレプシー、呼吸関連睡眠障害、概日リズム睡眠−覚醒障害、または睡眠時随伴症)ではうまく説明されず、その経過中にだけ起こるものではない。

E.その過眠は、物質(例:乱用薬物、医薬品)の生理学的作用によるものではない。

F.併存する精神疾患や医学的疾患では、顕著な過眠の訴えを十分に説明できない。

 

※参考文献

『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)

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