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神経性無食欲症

F50.0 神経性無食欲症 Anorexia nervosa

神経性やせ症/神経性無食欲症

 

疾患の具体例

20歳、女性。もともとは健康的な体重でしたが、職場に好きな人ができたことを機に、「やせてきれいになろう」と決意しました。食事は炭水化物や脂質を徹底的に制限し、綿密なカロリー計算を欠かしません。頻繁にスリーサイズを測り、毎日、ジムに通って激しい運動をしています。次第に体重が低下し、BMIは17.0kg/uを下回っても、「まだまだ太りすぎだ」と感じます。気分は抑うつ的で、月経が止まり、不整脈になり、皮膚がカサカサするなどの不調が現れましたが、厳しい食事制限や過度な運動をやめようとは思いません。しかし、焦燥感や不眠に苦しむようになりました。見るからにやつれていくのを心配した親が病院に連れて行くと、「神経性無食欲症」と診断されました。

 

特 徴

WHOによる診断ガイドライン「ICD-10」に記載された「神経性無食欲症」は、患者さん本人による意図的な体重減少が特徴です。アメリカ精神医学会の診断と統計マニュアル「DSM-5」では、「神経性やせ症/神経性無食欲症」の名称で解説しています。

神経性やせ症の患者さんは、正常値を下回る体重を維持しています。正常な体重は「BMI*」で示され、この数値が17.0kg/u未満の人は、中等度または重度の低体重と見なされています。BMIが17.0〜18.5kg/u以上の大人でも、既往歴などによっては低体重と見なされることがあります。

この障害のある人は、体重増加や肥満になることに強い恐怖を抱いています。それは体重が減少しても緩和されません。また、体重や体型に対する考え方がゆがんでいます。特に太っていなくても、「自分は太りすぎだ」と悩んだり、やせていることは認識していても「脚が太い」などと感じたりする人もいます。頻繁に体重計に乗ったり、身体の部位を強迫的に測定したり、しつこく鏡を見て気になる部位を確認する人もいます。体重が減ることは、本人にとって感慨深い偉業であり、この上ない自己鍛錬の表れと認識します。一方、体重増加は受け入れがたい自己管理の失敗ととらえます。自分がやせていて、深刻な低栄養状態に陥っていても、なかなか認めようとしません。

さらに、神経性やせ症の患者さんの中には「排出行動」といって食べたものを吐き出したり、下剤や利尿剤、浣腸を乱用したりして排出する人もいます。この排出行動や体重減少によって身体が飢餓状態になると、時に生命の危機を及ぼすことがあります。栄養が足りないために、ほとんどの主要臓器に影響を与え、無月経やバイタルサインの異常などをもたらします。深刻なほどに体重が減少すると、多くの場合、抑うつ気分や社会的引きこもり、焦燥感、不眠、性的興味の低下などの症状が現れます。

なお、神経性やせ症の患者さんは自殺の危険性が高く、年間10万人あたり12人と報告されています。

*BMI(Body Mass Index) = 体重(kg) ÷ ( 身長(m) × 身長(m) )

 

有病率

「DSM-5」によると、若い女性における神経性やせ症の12ヵ月有病率はおよそ0.4%です。臨床症例での男女比はおよそ1:10で、男性の有病率は女性よりずっと少ないと推測されます。

 

経 過

「DSM-5」によると、神経性やせ症は、青年期または成人期早期に始まります。大学進学のために家を離れるなど、大きなストレスがかかる出来事と関係していることもよくあります。経過はかなり多様で、診断基準をすべて満たす期間が一度で済む人もいれば、再発する人もいます。何年にもわたって慢性的に続く人もいます。しかし、ほとんどの患者さんは発症から5年以内に寛解します。

なお、神経性やせ症の粗死亡率はおよそ5%です。死亡の原因は、通常、この疾患に関連した身体合併症か自殺です。

 

原 因

気質要因:

子どもの頃に不安症群を発症したり、強迫症の傾向を示したりする人は、神経性やせ症を発症する危険性が高まります。

環境要因:

モデル業など、痩身を奨励するような職業、趣味などは、神経性やせ症の危険を増大することがあります。

遺伝要因と生理学的要因:

神経性やせ症の人の第一度親族は、この疾患および神経性過食症を発症する危険が高まります。

 

治 療

『カプラン 臨床精神医学テキスト』によると、望ましい体重より20%以上少ない場合は、入院治療が推奨されます。精神科への入院治療では、一般的に行動管理的取り組み、個人精神療法、家族教育および家族療法、場合によっては向精神薬投与の組み合わせが用いられます。

 

診断基準:ICD-10

神経性無食欲症

確定診断のためには、以下の障害のすべてが必要である。

  1. 体重が(減少したにせよ、はじめから到達しなかったにせよ)期待される値より少なくとも15%以上下回ること、あるいはQuetelet's body-mass index(BMI)が17.5以下、前思春期の患者では、成長期に本来あるべき体重増加がみられない場合もある。
  2. 体重減少は「太る食物」を避けること。また、自ら誘発する嘔吐、緩下薬の自発的使用、過度の運動、食欲抑制薬および/または利尿薬の使用などが1項以上ある。
  3. 肥満への恐怖が存在する。その際、特有な精神病理学的な形をとったボディイメージのゆがみが、ぬぐい去りがたい過度の観念として存在する。そして患者は自分の体重の許容限度を低く決めている。
  4. 視床下部下垂体性腺系を含む広汎な内分泌系の障害が、女性では無月経、男性では性欲、性的能力の減退を起こす(明らかな例外としては、避妊用ピルとして最もよく用いられているホルモンの補充療法を受けている無食欲症の女性で、性器出血が持続することがある)。また成長ホルモンの上昇、甲状腺ホルモンによる末梢の代謝の変化、インスリン分泌の異常も認められることがある。
  5. もし発症が前思春期であれば、思春期に起こる一連の現象は遅れ、あるいは停止することさえある(成長の停止。少女では乳房が発達せず、一次性の無月経が起こる。少年では性器は子どもの状態のままである)。回復すれば思春期はしばしば正常に完了するが、初潮は遅れる。

 

診断基準:DSM-5

神経性やせ症/神経性無食欲症

A. 必要量と比べてカロリー摂取を制限し、年齢、性別、成長曲線、身体的健康状態に対する有意に低い体重に至る。有意に低い体重とは、正常の下限を下回る体重で、子どもまたは青年の場合は、期待されている最低体重を下回ると定義される。

B.有意に低い体重であるにもかかわらず、体重増加または肥満になることに対する強い恐怖、または体重増加を妨げる持続した行動がある。

C.自分の体重または体型の体験の仕方における障害、自己評価に対する体重や体型の不相応な影響、または現在の低体重の深刻さに対する認識の持続的欠如。

 

いずれかを特定せよ

(50.01)摂食制限型:過去3ヵ月間、過食または排出行動(つまり、自己誘発的嘔吐、または緩下剤・利尿薬、または浣腸の乱用)の反復的なエピソードがないこと。この下位分類では、主にダイエット、断食、および/または過剰な運動によってもたらされる体重減少についての病態を記載している。

(F50.02)過食・排出型:過去3ヵ月間、過食または排出行動(つまり、自己誘発的嘔吐、または緩下剤・利尿薬、または浣腸の乱用)の反復的なエピソードがあること。

 

該当すれば特定せよ

部分寛解:かつて神経性やせ症の診断基準をすべて満たしたことがあり、現在は基準A(低体重)については一定期間満たしていないが、基準B(体重増加または肥満になることへの強い恐怖、または体重増加を回避する行動)と基準C(体重および体型に関する自己認識の障害)のいずれかは満たしている。

完全寛解:かつて神経性やせ症の診断基準をすべて満たしていたが、現在は一定期間診断基準を満たしていない。

 

現在の重症度を特定せよ

重症度の最低限の値は、成人の場合、現在に体格指数(BMI:Body mass index)(下記参照)に、子どもおよび成人の場合、BMIパーセント値に基づいている。下に示した各範囲は、世界保健機関の成人のやせの分類による。子どもと青年については、それぞれに対応したBMIパーセント値を使用するべきである。重症度は、臨床症状、能力低下の程度、および管理の必要性によって上がることもある。

軽度:BMI≧17kg/u

中等度:BMI16〜16.99 kg/u

重度:BMI15〜15.99 kg/u

最重度:BMI<15 kg/u

 

※参考文献

『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)

『カプラン 臨床精神医学テキスト』(メディカルサイエンスインターナショナル)

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