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こころの病気のはなし > 一般編 > 心の病気の頻度

心の病気の頻度(日本における精神疾患の有病率)

20世紀の間、精神疾患の有病率に関する信頼できる数字はありませんでした。

21世紀になり、ようやく、世界精神保健調査(World Mental Health, WMH(1))とよばれる全世界規模の調査がWHOとハーバード大学医学部の主導で行われました。これは、26カ国、合計13000人を対象とする大規模国際共同研究です。世界各国から無作為に選ばれたひとりひとりの住民に対して、各国の精神科医らがWMH-CIDIという最新の精神科構造化面接を行って入念に診断をつけて、実数調査を行いました。

日本での調査は、2002年から2003年の間に、川上憲人博士を中心に、山形県から鹿児島県までの合計11地域の20歳以上住民が対象として行なわれました。現在のところ、この調査によって得られたデータが、世界でもっとも信頼できると考えられています。

● 概要

過去12ヶ月間に何らかの気分、不安、物質使用障害を経験した方は8.8%、うつ病を経験した方だけでも2.9%みられること(2)、過去12ヶ月間のうつ病の経験者のうち、精神科医に受診した人は14%、心理職に相談した人は14%、一般医に相談した人は9%であり、7割強の人は医療機関に相談していないことがわかりました(3)

上記の数字を、率でなく、実数で表現すると、日本の人口が1億2千万人なので、過去一年間に、1000万人以上の方が精神疾患に罹患し、うつ病は、380万人以上が罹患していることになります。280万人のうつ病の方が、いまだ、どこの医療機関にも通院されていないことを意味しています。

最近よく話題になる「引きこもり」は、1人以上の子供のいる主婦4134人からの面接調査では、その0.5%の方の子供にひきこもりの経験がある(4)という結果になっており、おそらく、350-400人に1人のお子さんが、引きこもりである可能性が示唆されています。

日本における精神疾患の有病率と重症度:大分類
障害名 1年間の有病率 重症度
重症 中等症 軽症
% (95%CI) % (95%CI) % (95%CI) % (95%CI)
不安障害 4.8 (3.0–6.6) 15.4 (4.8–26.0) 59 (46.1–71.9) 25.6 (14.8–36.4)
気分障害 3.1 (2.1–4.1) 25.8 (13.6–38.0) 56.4 (39.5–73.3) 17.8 (6.2–29.4)
物質使用障害 1.7 (0.3–3.1) 29.7 (3.2–56.2) 10.2 (0.0–23.7) 60.1 (27.8–92.4)
精神疾患全体 8.8 (6.4–11.2) 16.7 (9.8–23.6) 46.6 (35.6–57.6) 36.7 (26.3–47.1)
  重症度の全体
に対する頻度
1.5 (0.7-2.3) 4.1 (2.7-5.5) 3.2 (1.8-4.6)

● 不安障害

不安障害は、不安な気持ち、恐怖心、心配などで心がいっぱいになる疾患です。不安が強いと、息苦しい、汗をかくなどの身体症状が多く現れます。この調査によって、なんであれ、不安障害の分類に帰属する疾患の、日本での有病率は、4.8%です。

個別に見ると、パニック障害は0.5%(広場恐怖のないパニック障害が0.3%)、全般性不安障害は1.2%、特定の恐怖症は2.7%、社交不安障害は0.8%、PTSDは0.4%であることが報告されています。特定の恐怖症とは、海老が怖いとか、高所が怖いなどの疾患で、他の不安障害とも並存します。

● 気分障害

気分障害とは、うれしいとか楽しい、悲しいとかむなしいなどの、気分や感情に変化の現れる疾患です。気分障害に含まれる疾患は、日本での有病率は、3.1%です。

個別に見ると、大うつ病が2.9%、気分変調性障害が0.7%、躁うつ病が0.1%です。

● 物質使用障害(物質乱用と物質依存)

物質使用障害とは、アルコールや薬物、カフェインなどの物質を、常軌を逸した量を使用したり、その嗜好性に嵌って、摂取しないといられない体質になることによって、正常な社会生活を営めなくなる病気です。日本全国で、約1.7%の方が、この疾患に罹患しています。

個別に見ると、アルコール乱用と依存は1.6%(アルコール依存は0.4%)、薬物乱用と依存は0.1%(薬物依存は0.1%)です。

● その他

この調査では、間欠性爆発性障害が1%であることも報告されています。この病気は、怒りの衝動を抑えることができず、暴力行為や、所有物の破壊を何度も行ってしまう疾患です。この調査では、統合失調症は含まれていません。

日本における精神疾患の有病率と重症度:個別疾患
障害名 1年間の有病率 重症度
重症 中等症 軽症
(95%CI) (95%CI) (95%CI) (95%CI)
パニック障害 0.5 (0.0-1.1) 24.8 (0.0-58.3) 69.1 (32.8-100.0) 6.1 (0.0-18.6)
広場恐怖のないパニック障害 0.3 (0.1-0.5) 33.7 (0.0-79.6) 66.3 (20.4-100.0)   計算不能
全般性不安障害 1.2 (0.6-1.8) 29.2 (8.0-50.4) 70.8 (49.6-92.0)   計算不能
特定の恐怖症 2.7 (1.5-3.9) 10.9 (0.0-24) 46.9 (27.9-65.9) 42.2 (26.1-58.3)
社交不安障害 0.8 (0.2-1.4) 31.6 (0.0-66.7) 68.4 (33.3-100.0)   ---
PTSD 0.4 (0.0-0.8) 65.6 (37.4-93.8) 5.9 (0.0-16.3) 28.5 (0.0-59.7)
大うつ病 2.9 (2.1-3.7) 22.1 (10.7-33.5) 60.4 (44.9-75.9) 17.5 (5.3-29.7)
気分変調性障害 0.7 (0.3-1.1) 41.2 (0.0-83.3) 43.7 (0.0-93.1) 15.1 (0.0-32.7)
躁うつ病 0.1 (0.0-0.3)   計算不能   計算不能   計算不能
間欠性爆発性障害 1 (0.4-1.6) 15.3 (0.0-40.6) 33 (0.0-71.4) 51.7 (20.1-83.3)
アルコール乱用と依存 1.6 (0.2-3.0) 26.7 (1.2-52.2) 10.6 (0.0-24.7) 62.7 (30.6-94.8)
アルコール依存 0.4 (0.0-0.8) 81.7 (44.1-100.0) 18.3 (0.0-55.9)   計算不能
薬物乱用と依存 0.1 (0.0-0.3)   計算不能   計算不能   計算不能
薬物依存 0.1 (0.0-0.3)   計算不能   計算不能   計算不能

● 世界では

この調査での世界での数字には、大変驚かされるものがあります。

不安障害、気分障害、衝動制御障害、物質使用障害の合計に関して、もっとも有病率が高かったのは、アメリカ合衆国の26.4%です。国民の1/4以上が、一年間の間で、なんらかの精神疾患に罹患しているということを意味しており、アメリカ的文化や社会・人種構造がこうした結果をもたらしていると思われます。

米国の次に多い順に各国の数字を紹介すると、ウクライナ20.5%、フランス18.4%、コロンビア17.8%、レバノン16.9%、オランダ14.9%、メキシコ12.2%、ベルギー12.0%、スペイン9.2%、ドイツと中国の北京が9.1%、日本が8.8%、イタリアが8.2%、ナイジェリアが4.7%、中国上海が4.3%でした(5)

● 参考文献など

(1) http://www.hcp.med.harvard.edu/wmh/

(2) Kawakami N, Takeshima T, Ono Y, Uda H, Hata Y, Nakane Y, Nakane H, Iwata N, Furukawa TA, Kikkawa T. Twelve-month prevalence, severity, and treatment of common mental disorders in communities in Japan: preliminary finding from the World Mental Health Japan Survey 2002-2003. 
Psychiatry Clin Neurosci. 2005;59(4):441-52.

(3) Naganuma Y, Tachimori H, Kawakami N, Takeshima T, Ono Y, Uda H, Hata Y, Nakane Y, Nakane H, Iwata N, Furukawa TA, Kikkawa T. Twelve-month use of mental health services in four areas in Japan: findings from the World Mental Health Japan Survey 2002-2003. Psychiatry Clin Neurosci. 2006;60(2):240-8.

(4) Koyama A, Miyake Y, Kawakami N, Tsuchiya M, Tachimori H, Takeshima T; World Mental Health Japan Survey Group, 2002-2006.Lifetime prevalence, psychiatric comorbidity and demographic correlates of "hikikomori" in a community population in Japan. Psychiatry Res. 2010;176(1):69-74.

(5) Demyttenaere K, Bruffaerts R, Posada-Villa J, Gasquet I, Kovess V, Lepine JP, Angermeyer MC, Bernert S, de Girolamo G, Morosini P, Polidori G, Kikkawa T, Kawakami N, Ono Y, Takeshima T, Uda H, Karam EG, Fayyad JA, Karam AN, Mneimneh ZN, Medina-Mora ME, Borges G, Lara C, de Graaf R, Ormel J, Gureje O, Shen Y, Huang Y, Zhang M, Alonso J, Haro JM, Vilagut G, Bromet EJ, Gluzman S, Webb C, Kessler RC, Merikangas KR, Anthony JC, Von Korff MR, Wang PS, Brugha TS, Aguilar-Gaxiola S, Lee S, Heeringa S, Pennell BE, Zaslavsky AM, Ustun TB, Chatterji S; WHO World Mental Health Survey Consortium. Prevalence, severity, and unmet need for treatment of mental disorders in the World Health Organization World Mental Health Surveys. JAMA. 2004:2;291(21):2581-90.

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