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こころの病気のはなし > 一般編 > 抜毛症

心の病気の種類

抜毛症

「抜毛症」は、体毛を抜くことに没頭し、他人からわかるような脱毛状態になる慢性疾患です。それほど珍しくない疾患で、有病率はもっとも重症の場合で一般人口の0.6〜3.4%と報告されています。男女比は、10対1の割合で女性のほうが男性より多く見られます。ただし、男性は抜毛症を隠すことが多いので、実際には男性の患者さんのほうが多いかもしれません。

 

● 症状

抜毛症のある人は、「毛を抜くのはよくないことだ」と理解していても、抑えることができません。自分で自分の行為を制御できない苦痛、とまどいなどの否定的な感情にさいなまれ、社会的・職業的な不利益が生じることもあります。通常、毛を抜く前に緊張感が高まり、実際に毛を抜くと開放感や満足感を得ます。女性は、女性ホルモンに影響されて症状が現れる場合があり、月経周期や閉経のタイミングに連動して悪化する人もいます。

 

抜毛症は以下の2つのタイプに分けることができ、ほとんどの場合、両方が組み合わさっています。

  • 自覚のある抜毛 ・・・・自分自身で「毛を抜いている」という意識があります。精神的な衝動や、身体のかゆみやヒリヒリする感じ、思考をストップさせるためなどに毛を抜きます。
  • 無自覚の抜毛性 ・・・・ 座って何かをしている時などに、いつの間にか毛を抜いています。

 

抜毛はすべての体毛が対象になり得ますが、もっとも多いのは髪の毛です。ほかに、眉毛、まつげ、あごひげなども比較的よく見られます。体幹部やわき、陰部の毛が対象となることはあまりありません。ただし、抜毛する部位は時間の経過とともに移り変わるかもしれません。

繰り返し毛を抜いた結果、毛が生えにくくなったり、毛の質が変わったりすることがあります。例えば、頭が王冠のように脱毛するか、襟足部分以外の髪の毛がない状態、あるいは眉毛とまつげが完全になくなっている患者さんもいます。

 

抜毛症の患者さんは、この障害を「恥ずかしい」と感じており、毛が失われた部分をスカーフやかつら、化粧品などで隠そうとします。通常、直接の家族をのぞいて他人の前では抜毛しません。

また、抜毛症の35〜40%の患者さんは、抜いた毛髪を口に入れ、かんだり飲み込んだりします(食毛症)。その毛が毛玉となって消化管にたまり、毛髪胃石、腸閉塞、栄養失調などを引き起こす原因になります。たまに、毛を抜きすぎたがあまり、指に紫斑(紫色のあざ)ができたり、手首や首、肩などを痛めたり、目の炎症、歯の損傷(毛髪をかむことで歯が摩耗)が生じることもあります。

 

● 他の病気との関係

抜毛症は、衝動を抑えられない慢性疾患という点で「強迫症」と重なり合います。しかし、抜毛症には強迫観念(考えないようにしたくても、頭から離れない観念)はなく、強迫行為(やめたくても、やめられない行為)も抜毛だけに限られる点などが強迫症と違います。

また、抜毛症のある人のほとんどは、皮膚をひっかく、爪をかむ、唇をかむなどの行為を繰り返します。

なお、皮膚に何らかの異常があり、それが原因で抜毛している場合は、抜毛症に含めません。ほかに、強迫症で左右対称にこだわる人が、毛髪を左右対称にしたいために毛を抜くことや、醜形恐怖症の人が自分自身を醜いと思って体毛を除去する場合も抜毛症ではありません。精神病性障害のある人は、幻覚や妄想への反応として抜毛することがありますが、これも抜毛症ではありません。

 

● 原因

抜毛症はさまざまな原因がかかわっていますが、1/4以上の患者さんはストレスが関係しています。例えば、母子関係が悪いとか、一人で取り残される恐怖や、誰かを喪失した悲しい経験をしたことなどが、発症のきっかけになることが多いと言われています。抑うつ気分が抜毛症を誘発するという説もありますが、抜毛症の患者さんに特徴的な疾患やパーソナリティ属性はありません。 抜毛症の人の家族には、しばしばチックや衝動制御障害、強迫症状があり、遺伝的な原因があるかもしれません。

 

● 治療

抜毛症のある人のほとんどは、抜毛をしていることを認めます。そのため、通常は詳しい検査などをしなくても診断がつきます。しかし、円形脱毛症や頭部白癬などとの鑑別のため、「パンチ生検」といって皮膚をわずかにくりぬき、顕微鏡で見る検査を用いる場合もあります。

治療は精神科医と皮膚科医が連携して行います。薬を使った治療法としては、局所のステロイドや水酸化塩酸塩、抗ヒスタミン特性をもつ抗不安薬、抗うつ薬、抗精神病薬などがあります。初期の抜毛症では、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が有効だったと報告されています。SSRIがあまり効かない人には、ピモジド(オーラップ)などのドパミン受容体拮抗薬を追加すると改善する可能性があります。

 

抜毛症の平均発症年齢は10代前半ですが、もっと年長での発症もあります。経過は人によって異なり、慢性化するケースと、寛解するケースがあります。6歳より前に発症した人は、医療機関での指示や援助、行動療法に反応しやすいため、寛解にいたることが多いとされています。一方で13歳以降に発症した人は慢性化しやすい傾向があります。

医療機関を受診した患者さんの約1/3は発症から1年以内ですが、時に20年以上も抜毛症が続いた例もあります。

 

※参考文献

『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)

『カプラン 臨床精神医学テキスト 日本語版第3版』(メディカルサイエンスインターナショナル)

 

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